日本の地方にひかれる中国人の深層心理

そこには「清潔・自然・癒やし・秩序」がある

採れたての食材で作った郷土料理のシンプルさと新鮮さ(安全性も!)は、どんな高級なレストランでも味わえない。星空が見え、美味しい空気を吸えるのも贅沢なこと。都市にない山や泉、畑と食材、何より家族や友人と一緒にゆったりできる時間は、都市人にとって非常に魅力的だ。

特に子どもを持つ親たちは、自分の子どもには地方や農村で自然を満喫し、動物と触れてほしいと思っている。というのも、子どもたちは先進国並みの生活環境の下で、平日とほとんどの休日は勉強、塾、ピアノなどに「占領」され、友だちとはiPadとゲーム機で過ごしている。牛肉をよく食べるが本当の牛は見たことはなく、「五穀不分(穀物を見てもそれが何なのか、見分けがつかないこと)」の世代だ。自然に対する感覚が磨かれる機会はほとんどない。

魅力を感じる地方の風土と厚い人情

だが、農村には欠点もある。それは衛生状態と社会的インフラの不足だ。トイレ、宿泊施設、安全対策、緊急医療システム・・・子どもが急に発熱したり犬に噛まれたらどうしたらいいのか。農家とトラブルがあったとき誰に相談すればよいのか。便利な都市生活に慣れてしまった人は、一定の条件が整わないかぎり、実際に田舎に行こうという気にはならない。

つまり、訪日中国人が日本の地方に行きたがる理由は明らかだ。地方出身者も大都市出身者も、田舎を必要としている。そして、心のよりどころがほしい、現状から逃避したい、親友と団らんしたい、子どもに自然と触れ合う機会をもたせたい・・・そう考える人たちが理想とする地方は、「清潔・自然・癒やし・秩序」が備わった日本に多くある。

中国人にとって、温泉などの文化体験はもちろん魅力的だが、「普段の」地方風土と厚い人情にふれられることに高い価値を見出している。彼らを呼び込みたいという地方自治体には、宿泊設備が整っていること、案内マップやアプリが整備されていること、中国人のニーズに合う強み(緑が多い、食材が美味しい、日本らしいおもてなし…)を適切に伝えることをアドバイスしたい。

8月、冒頭で紹介した北京大学の先生を、山梨県にある小さな村に案内した。地方出身の先生はコンニャク畑を歩き回り、緑いっぱいのわさび畑を満喫し、老人ホームの設備に感服し、シンプルで美味しい地元料理をエンジョイし、非常に楽しそうだった。綿雲が浮かぶ青空の下、先生の清々しい表情が今でも印象に残っている。

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カーリング人気萌芽の時代から、平昌五輪での銅メダル獲得まで戦い抜いてきた著者。リーダーとして代表チームを率いつつ、人生の一部としてカーリングを楽しめるにまで至った軌跡や、ママさんカーラーとして子育てで得た学びなどを語る。