日本の地方にひかれる中国人の深層心理 そこには「清潔・自然・癒やし・秩序」がある
1958年に中国政府は「都市戸籍」と「農村戸籍」に厳格に区別する戸籍制度を導入した。人々は城里人(都市人)と農民に分けられ、最低賃金、医療、教育、生活保護、年金などの社会保障制度について「雲泥の差」と言っても過言ではないほど、都市人が優遇されている。農村戸籍を持つ人が農村から都市に移動し、特に大都市の戸籍に変更することは極めて難しい。都市と農村の格差は改善されているが、依然大きいままだ。
実は、北京・上海のような大都市の出身者と地方の都市の出身者にも格差は存在する。良い大学・病院などは大都市に集中し、仕事の機会も多い。「もっと良い生活を送りたい」「将来、貧乏でつまらない親になりたくない」…そんな向上心あふれる地方出身者は、この格差から抜け出そうと一生懸命勉強し、良い大学に入ることに必死だ。
PM2.5と競争にあけくれる都市での生活
なぜなら、「大都市の良い大学→大都市の良い就職先→大都市戸籍に変え『北京人』『上海人』になる→大都市で住宅を買って家族を持つ→親を大都市に転居させる→家名を上げる→成功した人生」という強い信念を持つからだ。しかし、現実はどうだろうか。
良い大学に入ったとしても、必ずしも良い就職先を見つけられるわけではない。北京・上海の戸籍制度は厳しく、戸籍をもらうには基本的には公務員になるか国有企業に行くしかない。その競争は「数千人対一つのポスト」と言われるほど厳しい(コネがあれば競争は少しラクになるが)。
無事に就職できても試練が待っている。上司とうまく付き合わないと左遷されたり、職場の有力な「圏子(友人グループ)」に入らないと出世できないというように、仕事より人間関係のほうがずっと重要だからだ。
「閑職に飛ばされることなく成功したい」という信念でなんとか頑張ったとしても、PM2.5と競争にあけくれる都市で、太陽も見えない毎日を過ごすことに疲れている。だからこそ、自分が子どもの頃に過ごした田舎に戻り、自然に癒やされたいという強い願望を持つようになる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら