日本の地方にひかれる中国人の深層心理 そこには「清潔・自然・癒やし・秩序」がある

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また、地方出身者は大都市出身者から「外地人」「郷下人」と呼ばれている。日本語の「地方出身者」「田舎者」と似ており、地位が低い地域から来た外の人という意味合いがある。地方出身者たちは、①大都市出身者にばかにされていないかと心配する、②大都市出身者と自分たちの立場があまりにもアンフェアなことに不公平感を持っている、③自分が地方に帰りたくても、子どもにつらい体験をさせたくないので、彼らのためにも大都市の人になって晴れ晴れとした気持ちになりたい、そんな複雑な気持ちを持ち続けている。

それだけではない。大都市の戸籍に変わったとしても、大都市に対して帰属意識を持ちにくく、「ここは私の家ではない」「ここの住民は人情が薄い」「死ぬときやはり田舎に帰りたい」と思うようになる。しかし、地元に帰ると収入は減少するし、社会制度・都市インフラの整備も低い水準にあるので、都市生活を捨て故郷に戻ることをなかなか決断できない。

このように、心の中で葛藤を抱えている地方出身者は、金持ちになったとしても、静かできれいな「田園風景」を見たい、日常生活から離れ心から休みたい、という気持ちが非常に強いのである。

都市人の間では「農家楽」が定番娯楽に

一方、元々の都市人や大都市で生まれた新世代の人たちはどうか。実は、都市で安定した生活を送っている彼らもまた、田舎を必要としている。

中国では数年前から「農家楽」、農家生活を楽しもうというレジャーが都市近辺で流行っている。土曜日に家族や友人と一緒に車で1~3時間程度の郊外に行き、自然の風景を楽しみ、農家の庭園(都市生活には考えられない「贅沢品」)でバーベキュー(BBQ)をしたり、農家の畑で野菜、果物を採ったりするのだ。池のある農家だったら釣りまでできる。民宿(農家の住宅)に1泊して、美味しい朝食を食べ、農業見学や山登りをし、日曜日の夕方に都市に戻り、翌日からの「戦い」に備える。

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