幸之助さんと早川さんの哲学 シャープ元副社長・佐々木正氏②

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ささき・ただし 1915年生まれ。京都大学工学部卒。神戸工業(現・富士通)取締役を経て、シャープ副社長、顧問。電卓の生みの親。シャープを日本有数の家電メーカーに育て、日本の半導体産業の礎を築いた。現在はNPO法人・新共創産業技術支援機構の理事長を務める。

水道哲学は、私の考えとは異なります

今後は、数が少なくても値打ちのあるものを作る時代です。いつまでも「量産主義」では、市場に受け入れられない製品しか生まれない。材料を中心に発想すれば、もっといい仕事ができるはずです。

松下幸之助さんは偉大な方でしたが、「水道のように、いいものをどんどん安く供給する」という水道哲学は、私の考えとは少々異なります。GEのジャック・ウェルチだって、「消費こそ美徳なり」なんて、もう言いませんよ。ところが、パナソニックは、PHP研究所を見ていても、水道哲学に強く影響されている。ちょっと違うと思うな。

幸之助さんは、非常に勘のいい人ですよ。でも、哲学が合わない(笑)。早川(徳次・シャープ創業者)さんは商売下手だけど、哲学がいい。

早川さんは、「佐々木さんね。何かよいもの考えてちょうだい」と言うんだね。われわれが作るものは、大衆を幸福にするもんや。大衆に売ろうと思ったら、会社をたくさん作らんといかん。シャープにはそれだけのカネがない。それなら、リーダーシップをとって、人にまねされるような企業を作ってくれと。技術を取られたら、また次の技術を開発する。その代わり、特許料はいただく。

松下電器が営業力を武器にすぐナンバーワンになるのを、早川さんは悔しがった。亡くなる前に、「あと、頼むね。松下の人にまねられても、すぐまねられるようなもの出せる、耐久力のある会社にね」と言われたことを記憶しています。

 幸之助さん本人から、松下に誘われたことがあるんですよ。ある経済人の団体に入ったとき、「俺のとこ来いや」って。断ったら、「いやあ君はバカだよ」って怒ってた。山下俊彦さんを社長に抜擢されましたが(在任1977~86年)、その山下さんが僕のところに、相談に来たことがあるんですよ。幸之助さんに、松下のシェア低下の原因を調べろと言われたと。請われて、松下の中央研究所で講演したこともあります。

「シャープは一つのものを出したからって安心するようなことはしない。われわれは、技術者が次から次へとあふれるように新しいものを出すよう養成しています」。そういう話をしました。実際、シャープの天理総合開発センターには、LSI先端工場や研究所があって、人材育成のための研修所もあったからね。

山下さんがすごいのは、講演の録音テープとテキストを、その後3年間、松下の新入社員に配ったことですよ。彼がタッチしなくなってからの松下は変わりましたけどね。

週刊東洋経済編集部
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