エアアジア、仰天人事に揺れる再参入の針路

突然のトップ交代で就航計画はどうなる?

実は、井手氏とエアアジアの接触は、今回が初めてではない。1月にスカイマークが経営破綻した際、井手氏はエアアジアに対し、支援を要請していた。このとき、エアアジア側の窓口となったのが、秦氏だった。

日本の航空業界が健全に発展していくには、全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)に対抗しうる「第三極」が必要だというのが、井手氏の持論。その考え方に秦氏は意気投合したという。

人事刷新がもたらす波紋

2011年にANAと合弁会社を設立し、日本市場に参入したエアアジア。本国マレーシア流の航空券予約システムが、日本人には使いづらかったことなどが災いし、搭乗率は徐々に低下。2013年には合弁を解消し、一度は日本から撤退した。が、2014年に楽天などを新たなパートナーに引き入れ、再参入計画をブチ上げた。

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2014年の会社設立会見で肩を組む、フェルナンデス氏(右から2人目)と小田切氏(同3人目、撮影:尾形文繁)

なぜ同社はそこまでして日本にこだわるのか。グループを率いるトニー・フェルナンデスCEOの視線の先にあるのは、米国だ。

グループの中で中長距離路線を担うエアアジアXは、クアラルンプールから関西国際空港を経由し、ホノルルへ向かう路線を米運輸省に申請済み。

ただ、米国路線を維持・拡大していくには、東南アジアの需要だけでは心もとない。日本での需要を掘り起こしていくためにも、エアアジア・ジャパンの事業を拡大し、認知度を引き上げることが不可欠なのだ。

だが皮肉なことに、今回の人事刷新によって、2016年4月を予定していた就航時期がさらに先送りされる可能性が高まった。ここにきて同社周辺では「井手氏の社内での受けが悪い」「今度は秦氏が社を去るのではないか」といったうわさが広がっている。小田切氏のみならず、再参入の準備を進めてきたキーマンの離散が相次げば、国交省に安全面の施策などを再度説明する必要が生じる。

その一方、10月に引き渡された初号機に続いて、2016年2月には2機目の機材が日本へやってくる。飛ばない航空機はリース料や駐機料の支払いを生むだけであり、資金繰りはますますタイトになる。「2016年4月までなら資金は持つが、就航が遅れれば、増資などの対応も避けられない」という声も漏れてくる。

リリースで「体制強化」を強調した幹部人事が、就航計画にさらなる狂いを生じさせている現状を、どう乗り越えていくのか。先行きに不透明感が増してきた。

「週刊東洋経済」2015年12月19日号<14日発売>「核心リポート03」を転載)

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