ファッション誌トップシェア、宝島社の女性誌マーケティングの秘密(上)
価格も毎号見直す
雑誌の顔とも言える表紙の構成も見直した。雑誌の表紙には「上から12センチの法則」がある。雑誌が書店やコンビニエンスストアの棚に立てて並べられたときに見えるのは表紙の上から12センチメートルほどのみ。そのため、読者に訴求したい情報は表紙の上部12センチメートルに集約して掲載する必要がある。
そこで、雑誌タイトルにかぶせてブランドアイテムの写真を上に載せたところ、今まで雑誌に興味を持っていなかった層の読者にも手に取ってもらえるようになった。このアイデアも、マーケティング会議で生まれたルールの1つであり、それはコンビニエンスストアを担当する営業から提案されたものだった。
また、価格についても議論を行っている。たとえば『InRed』の定価はそれまで、880円であったが、マーケティング会議の討議で、30代の女性が900円近い値段の雑誌を買うだろうかという疑問の声が出た。
このとき、価格を650円にすれば、売り上げが3倍になるという「価格弾力性」の試算を提案。マーケティング会議メンバーの判断により、翌月から650円への変更が決まった。通常、雑誌の値付け方法としては、原価の積み上げにより決められていることが多い。しかし、当社では、価格設定方法は原価の積み上げではなく、「読者の感じるお買い得感」をもとに、毎号異なった価格を設定している。
多様なマーケティングのアイデア
また、通常、雑誌のプロモーションは読者向けに行われるものと思われているが、当社では、広告クライアント、書店へのプロモーション活動も大切にしている。さらに、新しい読者を増やすためには、ブランドアイテム(付録)や雑誌へのクオリティへの信頼が重要になるため、ブランドアイテムなどの制作過程をテレビ番組などで取り上げてもらうといったパブリシティ活動にも力を入れている。
PRを目的としたイベントも積極的に行っている。たとえば、その年のファッションリーダーを表彰する「日本ファッションリーダーアワード」などのイベントを主催、カジュアルファッションの市場を開拓し、普及に努めていることをアピールしている。“読者とともに祝う”をコンセプトに、11年は、AKB48板野友美さん、佐々木希さん、ベッキーさん、米倉涼子さん、梨花さんというファッションリーダーの方々へ賞を贈った。