技術官僚の理想主義がEU危機の種をまいた--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト


 すばらしい考えは、時限爆弾を内に抱えた美しい物に似ていることがある。統合された欧州という理想は、爆発するように設計されてはいないが、崩壊する可能性が十分にある。その理由を理解するには、知的な観点からEUの始まりを振り返ることが役に立つ。

EU創設の主要メンバーの一人、仏外交官でエコノミストのジャン・モネは、第2次世界大戦の大半を米国の首都ワシントンで欧州の連合国側の交渉者として過ごした。ドイツが敗れた後、モネは欧州統合だけが西側における壊滅的な戦争の再発を防げると確信した。モネは回顧録に「もし諸国家が国家主権に基づいて再興するなら、欧州に平和はないだろう」と書いている。

欧州大陸の大半の国がこの見方に合意した。従来の体制がほぼ無傷だった戦勝国の英国だけが疑念を表明した。ただ、この疑念は欧州大陸の統合そのものよりも、英国が欧州の野心的なプロジェクトに参加することに対してであった。

統合された欧州という理想はモネの計画よりもずっと古い。古代ローマほど古くはなくても、10世紀の神聖ローマ帝国までさかのぼることができる。それ以来、この欧州の理想は変化を経てきたが、二つのテーマは一貫している。

一つ目は統合されたキリスト教世界という理想で、欧州がその中心にあった。シュリー公爵(1559~1641年)はキリスト教国の欧州共和国を構想した。これは、トルコはキリスト教に改宗した場合にのみ参加可能であるというものだった。

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