2015年5月の段階で、日本からモンゴルに556社が投資しています。しかし、モンゴルへの海外資本はまだ圧倒的に中国が多く、日本からの投資は全体の1.6%です。輸出全体としても8割が中国なので、中国経済の変動がモンゴルに直接影響を及ぼしてしまいます。
そこで「鉱物資源に頼らない競争力のある産業を育てていくこと」が、モンゴルの今の課題です。日本とは戦略的パートナーとしてインフラ分野での協力も深まり、EPAも締結され、人材育成も行われています。日本はモンゴルが最初にEPAを結んだ国なのです。
能力・知識に関しては、日本はモンゴルの「兄貴」
そこで、ぜひビジネスにおいては、日本はもっと遠慮せずにモンゴル人の間合いに進んで入り込んで、「兄貴」としてマナーや技術を教えてほしいのです。お話したとおり、モンゴルは「家族」をいちばん大切にします。
ですから下手に遠慮をして距離を保つと、「他人」として扱われ自分の間合いに入れてもらえず、よい関係が築けません。それよりも「俺が兄貴だ、一緒にやろうぜ!」という態度で、家族として中に入ってきてほしいのです。
――ジンギスカンのころにあれだけ広大な領土を統治し、長い歴史と文化に誇りを持っている国の人に対して、「兄貴」として上からの立場で接して大丈夫なのでしょうか?
ビジネスで大切なのは3つ、能力・知識・人間力。その中の能力と知識は日本が上の場合が多いのです。モンゴルは産業をみてもこれからの国ですので、日本は兄貴であっていいのです。ただ、いちばん大切な人間力。そこは対等です。
――技術などの指導に関しては上の立場からですが、人としてはモンゴルのマナーなどを尊重して対等に接することが大切なのですね。
はい。モンゴル人はプライドが高いので、そこは気をつけたほうがいいです。日本の強さは「うそはつかない」「モノ作りの質の高さ」「おもてなし」など日本独特のものです。そこが世界で尊敬されているので、それをなくして欧米企業のようになったら尊敬はされません。モンゴルと共通する価値観や、日本独特のよさを前面に出しつつ、技術指導や規則などは遠慮しない強い姿勢をとっていけば、「家族」として中に入っていけます。
モンゴル人はIQが高いですし、順応能力があり、言語能力もあります。素地はよいのでそこに教え込んでください。最初に悪いところがあっても発展途上と理解して、腰を据えて教えてほしい。でもすきをみせたら甘く見られますので、そこは凛とした態度で接する。また最初から規約などはしっかりと作っておいて、罰するときには規約を基に罰せるようにしてすださい。
最初からすべてを理解して進めることは大変です。ですからモンゴルと日本のビジネス文化を知っている私のような、日本に留学経験がある人が橋渡しになれます。そういう人をパートナーに選ぶと、長期的にうまく行くと思います。モンゴルとのビジネスにおいて何かあれば相談してください。
(撮影:梅谷秀司)
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