【産業天気図・建設業】改正建設基準法の影響も痛手で「土砂降り」続く。業者の生き残りレースはより苛烈に

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建設業は2007年度後半、08年度とも「雨」空が続きそうだ。
 全国規模で建築着工の遅れを引き起こした改正建築基準法だが、ゼネコンではマンション施工の割合が高い業者を中心に影響が出ている。好調な業績を続けてきた長谷工コーポレーション<1808>だが、今08年3月期の単体受注高見通しを前期比約12%減の4000億円に下方修正(期初見通しは4300億円)し、連結営業利益も期初予想の635億円から10億円減額した。
 ほかにも、民間建築の完工高の半分近くをマンションが占める前田建設工業<1824>が法改正の影響を理由に単体受注高見通しなどを下方修正したほか、佐伯建設工業<1889>といった中堅ゼネコンも着工の遅れで07年9月中間期の業績が悪化した。
 鹿島<1812>や大成建設<1801>といった最大手では、「建築基準法改正が今期業績に与える影響は軽微」(最大手幹部)とする見解がほとんど。しかし、着工の遅れを挽回するために突貫工事を行う業者が増える懸念があり、昨今の職人不足と併せて考えると、今下期や来期の建設各社の民間建築分野の完成工事総利益率は、最大手も含めて悪化する懸念がある。
 全般的には、今期と来期が生き残りの正念場となる建設業者が多くなるだろう。昨年頻発した公共工事でのダンピング入札の影響は今期以降に表れるものが多く、さらに総合評価方式入札(価格以外に技術や実績を評点として加味する入札方法)では技術力を持つゼネコンが落札する傾向がより強くなった。
 最大手4社も、人件費や資材費が高騰している首都圏で大型建築工事を多く抱え、採算管理の難しい海外工事が増えた影響で、今年度上期は全社で前期比営業減益となった。特に鹿島は、「民間大型建築工事でコスト増となった」として、今08年3月期の連結営業利益の見通しを前期比7割にまで減額している。
 中堅では、みらい建設グループ(上場廃止)が今秋、資金繰りが行き詰まって民事再生法適用を申請。さらに、不正会計処理を発端に債務超過に陥った日特建設<1929>が不動テトラ<1813>の持ち分法適用会社になるなど、淘汰・再編の流れが活発化してきた。一方で、東南アジアなどで工場建築工事が好調なナカノフドー建設<1827>や都心での不動産売却が好調なスルガコーポレーション<1880>など、ユニークなビジネスモデルに特化した業者は好調だ。
 今、来期の厳しい状況が建設業者の淘汰の引き金になることは間違いないだろう。逆に言えば、このステージを超えれば、新しい建設業界の姿が見えてくる可能性もある。
【鈴木 謙太朗記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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