大王製紙の内紛、北越紀州製紙の仲介で収束へ、義理人情の恩返し劇
実際のところ創業家にとっては、すでに貸倒引当金計上という損失処理が済まされている大王製紙からの債務よりも、カジノ側への債務を抱えていることのほうが、よほど気が気ではなかったろう。
しかし、保有株式による代物弁済や、大王製紙への事態発覚後の譲渡担保の差し入れの結果、元会長本人は保有資産がほぼ皆無となってしまったことが明らかとなっている。スッカラカン。元会長の実父である元顧問としても、自分を顧問から解嘱した大王製紙の現経営陣へ、保有するグループ企業株式をそうそうは唯々諾々と譲渡するわけにもゆかなかったろう。業腹なのだ。
かくて大王製紙は3月29日、創業家からのグループ企業株式の買い取りが不首尾であることを会見で報告せざるをえなかった。
■3月29日、創業家からのグループ企業株式買い取りが不首尾に終わったことについての会見では佐光正義・大王製紙社長には硬い表情が目立った(撮影:吉野純治)
だが結局は、元会長の実父である元顧問が、「親子の情」よろしく保有株式の譲渡を決断したのである。その株式売却代金により、長男である元会長がこしらえた大王製紙グループそしてカジノ側への負債を帳消しにするものと目される。尻ぬぐいである。
では、株式の買い手である北越紀州製紙は、現経営陣と創業家とが対立の構図にある大王製紙に対し、なぜ火中の栗を拾うようにわざわざ手を伸ばし仲介の労をとったのか。