大王製紙の内紛、北越紀州製紙の仲介で収束へ、義理人情の恩返し劇
6月26日、大王製紙の創業家のうち4人が、保有する大王製紙の本体とグループ企業の株式をまず北越紀州製紙へ譲渡したうえで、そのうちグループ企業株式のほぼすべてを大王製紙へ再譲渡することで合意された。大王製紙が会見を開いた。
たしかにこの3者合意による利害関係者は多数にのぼり、また大王製紙が北越紀州製紙の関連会社となるなど、製紙業界にもたらす変化も大きい。だが東洋経済記者の判断では、この株式譲渡劇は実に単純明快な「義理」と「人情」を主軸とした「恩返し」劇である。そして、合意3者それぞれに費用や現金の支出といった代償はあるものの、とりあえずは「一石三鳥」の結末が予定されている。
合意した3者それぞれの損得を、まずは保有株式を譲渡する側である大王製紙の創業家について見てみよう。
大王製紙の創業者の子息は複数にのぼり、そのうち井川俊高氏(70)は今もって大王製紙の特別顧問であり、井川英高氏(61)は大王製紙常務取締役(6月27日専務取締役へ昇格予定)である。
今回、それとは別に保有株式を譲渡する創業家の4人とは、カジノ遊興費など総額106.8億円の不正貸付問題を引きおこした直系(つまり長男)3代目の井川意高・元会長(47)、直系2代目であり実父の井川高雄・元顧問(74、顧問に復帰予定)、実母の彌榮子氏、実弟の高博・大王製紙取締役(46、6月27日取締役退任予定)である。
■2012年3月6日、大王製紙グループ企業5社の株主総会へ出席する創業家の井川高雄・大王製紙元顧問(撮影:尾形文繁)
井川意高・元会長は大王製紙グループから総額106.8億円もの不正貸付金を引き出し、その後の元会長保有株式による代物弁済や一部返済がなされてもなお、債務残高は約53.4億円にのぼる。
だがそのように大王製紙から巨額の借り入れがあるにもかかわらず、関係者への東洋経済の取材によれば、元会長は大王製紙からの借り入れ以外にも、カジノ側からの債務も抱えている。