技術展で垣間見えた「国内鉄道業界」の実態 鉄道輸出「オール日本」はかけ声だけか?
技術展から見えてくる問題点はもう一つある。それは、鉄道業界の閉鎖性だ。技術展を立ち上げた際、主催者サイドが最も苦労したのは事業者をはじめとする鉄道関連企業に理解を得ることだったという。
もともと鉄道業界は国鉄時代から事業者と関連企業が強固に結びつき、さらに技術的に新規参入が容易ではないこともあってかなり“閉ざされた世界”だと言われている。つまり、新たな技術や製品の開発などを見本市の形式でアピールすることに対しては、そもそも消極的な面も否めなかったのだ。
技術展の会場を歩くと、通りすがりの人に積極的に声掛けをして自社製品の解説をするというよりは、旧知の取引先との会話に終始する出展企業も少なくなかった。もちろんこうした関係は互いに強固な信頼関係を築くことにつながり、鉄道の安全性を高めてきたことは間違いない。ただ、これではどうしても“ガラパゴス化”してしまい、新たなイノベーションが生まれにくいのも事実だ。
新たな動きも見えてきた
技術展の主催者は、こうした鉄道業界の閉鎖性に新風を吹き込むというのも狙いの一つとしている。
「“業界団体のための見本市にしない”というのが重要です。だから、基本的には来るものは拒まずの姿勢で出展を受け付けています。その点で言えば、今回はスーパーゼネコンである竹中工務店さんや向谷実さんの音楽館のような、これまでの技術展にはなかったところからの出展があったのは意味があると考えています。さらにどちらも多くの来場者を集めていた。松本零士さんの銀河鉄道999実現プロジェクトの講演もかなり好評で、個人参加だけでなく事業者や大手メーカーの方々も多く参加していました」(前出の担当者)
特に目立ったのは音楽館だ。同社の定番製品であるシミュレーターと新開発のホームドアを連動させる“見せ方”で多くの来場者を集めていた。向谷氏は技術展前に「たくさんの人に来てもらって意見やアドバイスをもらいたい。それが技術をより高めることにつながる」(前出の担当者)と語っていた。主催者サイドも「新しい風が入ることで技術力もさらに高まり、乗客のサービスも向上、そして海外展開にもプラスになれば」と期待する。
次回の鉄道技術展は2年後の2017年。課題である鉄道事業者の参加も含め、鉄道業界に新たなムーブメントを起こす見本市として発展するかどうか、見守りたい。
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