技術展で垣間見えた「国内鉄道業界」の実態

鉄道輸出「オール日本」はかけ声だけか?

2015年7月に都内で行われた第9回UIC世界高速鉄道会議では、安倍首相がわざわざ足を運んでアピールを行ったし、JR各社も積極的にアピールに務めていた。

ならば、海外からの来場者も年々増えている鉄道技術展でも事業者や大手メーカーが中心となった“オールジャパン”の力をアピールする必要があったのではないだろうか。事業者や大手メーカーの不参加については、技術展主催者サイドも大きな課題として認識している。

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出展社数は400を超えたがJRの出展はさびしいものだった

出展を見合わせる側にも相応の理由はある。前出の担当者は「特に鉄道事業者にはぜひ出展していただきたい」と、前置きしつつこう話す。

「技術展は出展者が事業者に対して自社の技術・製品をアピールするという性質も強く、現状では事業者の出展にはあまり大きなメリットを与えられていないのかもしれません。ただ、事業者の出展は関連する大手メーカーの出展も促し、それによって技術展そのもののさらに認知度もアップするはず。次回以降の課題の一つです」(前出の担当者)

そもそも技術展を主催する日本工業新聞社は、旧来より中小企業に強いネットワークを持つ。こうした事情もあって、技術展の参加企業は大半が中小企業となっている。そして、その中小企業がメーカーや事業者に対して自社技術を見せるという趣が強くなっているのだ。ただ、年々規模を拡大していることもあり、“オールジャパン”への対応も求められているのは事実だ。

「オールジャパン」に足並みの乱れ

しかし、こうした見方に対して「もともと国内の鉄道関連企業は“オールジャパン”にはなり得ない」と、足並みの乱れを指摘する関係者もいる。「安倍政権のいう鉄道輸出は、ひと言で言えば高速鉄道技術(新幹線)のインフラシステム全体を丸ごと輸出しようというもの。事業者ではJR東海が積極的な姿勢を見せています。ただし、同じJRグループでもJR東日本はシステム全体としての輸出にはそれほど積極的ではない。関連するメーカーなども同様です」(前出の担当者)。

さらに、各関連企業はそれぞれ自社努力で海外での実績を積み重ねている。日立製作所がイギリス高速鉄道の車両や運行システムなどの大規模受注に成功したことはその代表例だ。そのほかの企業でも今回の技術展で日本信号がアピールしていた無線式列車制御システム「SPRACS」はすでに中国・北京地下鉄で実用化されているなど、すでに日本の鉄道技術の海外展開は着実に進んでいるのだ。

そうした状況が鉄道技術展に現れていると考えればわかりやすい。日本を代表する鉄道事業者と鉄道メーカーが足並みをそろえるのではなく。各社が高い競争意識で海外展開を進めていく。安倍首相は“オールジャパン”という旗を振っている一方で、こうした状況こそが日本の鉄道産業の現状と言えるのかもしれない。

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