採算割れ運賃が促す、海運業界の大リストラ
山高ければ谷深し。海運業界が歯止めのかからない船舶運賃の下落に悲鳴を上げている。
特に厳しいのが鉄鉱石などを運ぶ大型貨物(ケープサイズ)船だ。6月中旬のロンドン市場では足元のスポット用船料が1日当たり4000ドルを割り込み、歴史的な安値水準に突入。1日当たり運航コストが2万5000ドル前後かかるため、ケープサイズ船を運航すればするほど、赤字が膨らむ計算になる。
この5年間、海運業界は運賃の乱高下という大波に翻弄されてきた。中国の粗鋼生産急増を背景に、2008年には20万ドル台という過去最高水準に上昇。商船三井、日本郵船、川崎汽船の大手3社は、08年3月期にそろって過去最高の純利益を稼ぎ出し、わが世の春を謳歌した。
ところが、リーマンショック後に状況が一変し運賃は急落。その後、一時は底打ちしたが、今になって当時のツケが回ってきている。
リーマンショック前の07~08年ごろに発注された新造船が10~12年に大量竣工しているためだ。ケープサイズ船の竣工数は00年代半ばまで全世界で毎年40~50隻程度にすぎなかった。だが、最近は、10年に約230隻、11年約250隻、12年も約240隻の竣工が予定されており、異例のペースだ。