レバ刺し禁止令、その微妙すぎる実効性

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レバ刺し規制の発端も、ユッケ食中毒事故にある。5人の死者が出たことを重く見た厚労省は生食用牛肉に関する規制の検討を開始。卸業者が「加熱用」として出荷していた牛の生肉が店舗では「生食用」として提供されていた問題が明らかとなり、昨年10月に内臓を除く生食用牛肉の規制を強化した。同時に生食用牛肉より食中毒が多いレバーの安全性を危惧する向きも広がり、販売規制へとつながった。

レバ刺しのほとんどは加熱用

ただ、今回の規制には大きな抜け穴がある。規制案にある「飲食に供する際に加熱することを前提として当該食品を販売する場合についてはこの限りでない」との文言がそれだ。

つまり、今回の規制ではレバ刺しの提供を禁止する一方、加熱することを前提とした生レバーの販売は禁じていない。これを受けて、中には「焼くことを前提に、今後もレバーを生のまま提供をする。リスクは十分説明するので、焼いて食べるか、生で食べるかは客の自己責任だ」と言い切る店も出てきているのだ。

一方、厚労省も「食品衛生法は事業者を規制する法律であって、消費者の行動を規制する法律ではない」としており、「消費者がレバーを自己責任において生で食べることを罰することはできない。これが限界だ」とする。

規制によって食肉業界が抱える根本的な問題を解決できるかも微妙だ。

かつてのユッケ同様、レバ刺しも「現在、生食用として流通している多くは加熱用。生食用の安全基準を満たすレバーの流通実績はほとんどない」(前述の野田専務理事)という。ある食肉関係者も「今までそこは“なあなあ”にやってきたところがある」と認める。

規制を設けても抜け穴があれば、これまで以上にグレーな取引が横行する事態も起こりかねない。規制の目的が問われる。

(松浦 大 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2012年6月30日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

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