レバ刺し禁止令、その微妙すぎる実効性
7月1日の「レバ刺し」提供の全面禁止の直前、一部の焼き肉店に客が殺到した。
東京・台東区にある「ホルモン寺」では、レバ刺し禁止が報道された翌日から電話が鳴りやまず、それまで1日数件だった予約の電話は30~40件に急増。6月は予約で満席となり、売上高は前年同月比1・5倍に達する見込み。
が、「レバ刺しはメニューの一つにすぎない。“バブル”が崩壊すれば地元の客が戻ってくる」と、同店の寺田穣店長。そもそも、昨年4月のユッケ食中毒事故を受けて、厚生労働省は同年7月から飲食店に対して生食用レバーの提供を自粛するように求めており、レバ刺しを提供する店は減っている。大半の焼き肉店にとって禁止令の影響は大きくないとみられる。
一方、牛の内臓を専門に扱う卸業者は戦々恐々としている。枝肉市場は大手中心だが、内臓を専門に扱うのは従業員数人程度の零細企業がほとんどだ。牛レバーの市場規模は「100億円程度で、その8割が生で食べられているようだ」(芝浦畜産臓器協同組合の理事長を務める羽根田實・協和食品代表取締役)。
レバー市場はすでにユッケ食中毒事故以降、縮小傾向にあった。レバ刺しを自粛する焼き肉店が増えたことで国産レバーの小売価格は100グラムあたり374円から248円まで4割近く下落。これに伴い卸売りも「レバーの卸売価格、取扱量がそれぞれ半減し、規模はかつての4分の1にまで縮んでいる」(日本畜産副産物協会の野田富雄専務理事)。このうえ、今回の規制によって「収益性の高い」(同氏)生食需要が消えればその影響は甚大だ。