山手線新車両で「広告の一等地」はどうなる? アナタが知らない、車内広告市場の最前線

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このスペースは首都圏全線一括販売が基本で、広告主は首都圏を走るすべての列車に広告を出す。2カ所のドアの両側に1枚ずつ、計4枚を掲示する場合、3万8200枚になる。

価格は1週間で2000万~3000万円と、決して安くない。にもかかわらず、飲料や化粧品などの大手メーカーに加えて、自己啓発本の出版社をはじめとした中小企業も出稿を狙っている。

「ドア横新Bに広告を出すと、売り上げが確実に増える。このスペースへの出稿が決まったというだけで重版をかけた出版社もあると聞く」(業界関係者)

デジタルサイネージが主体のE235系にしても、中吊りを廃止するかどうかの議論はあったが、ドア横新Bの広告スペースは紙であるにもかかわらず、最初の構想段階でもしっかり確保されていた。そう考えると、広告媒体としてのE235系の戦略は「デジタルサイネージありき」ではなく、「広告スペースの価値を高めること」だというのがよくわかる。

現在の車内広告市場の勢力図

車内広告を取り巻く情勢は大きく変化している(撮影:風間仁一郎)

車内広告市場では「JR、東京メトロ、東急の人気が高く、小田急、京王、西武、東武などが2番手」(広告業界関係者)とされる。

2番手クラスはその分、料金も安いが、列車内を見渡すと、とりわけ窓上広告に空きが目立つ。スペースが埋まっていたとしても、自社広告だったりする。一方で「広告スペースが余っていることを逆手に取って、3枚横並びの広告枠として販売することもある」(鉄道会社)。

相互直通運転の拡大によって、広告の出し方も変わってきた。出稿先の沿線住民だけでなく、相互直通先の利用者も呼び込もうとするマンション分譲業者がいる。東京メトロと相互直通運転をしている路線では、割安な料金でメトロ沿線に広告が出せることに注目する広告主もいる。

料金が高ければ高いなりに、安ければ安いなりに、広告会社の営業マンも広告主も知恵を絞る。移動中の車内、そんな事情に思いを馳せながら周囲をながめてみると、いつもと違う風景が見えてくるのではないだろうか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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