日本人はあまりにも儲ける気概がなさすぎる ダメと決めず、みずから勝ち方を考えよう
藤野:日本人はものづくりにこだわりすぎていますね。
こんな話があります。以前、米国西海岸のある都市に地下鉄を作る案件で、日本の重工メーカーとGEが競合したんですよ。発注元は、視察のときに、日本の技術に驚いたんですね。技術がすばらしい、働く人たちの目の輝きが違うと。じゃあ日本メーカーが受注できたのかというと、結果的にはGEが受注した。
理由は、プライスの差が全然違うから。GEの見積金額は日本メーカーの半額以下だったんです。では、なぜ半額の値段が出せたのかというと「リセールバリュー」です。GEは20年後に、南米で地下鉄の需要があることがわかっていた。そこで車両を買い戻して、中古で売ることを同時に確約していたんです。つまり、リースやセカンドマーケット、さらに解体、廃棄のところまで含めてビジネスだととらえているから、価格の調整もしやすい。
逆に日本の企業はお客様に売るところまでが商売だと思っていて、売ったものがそのあとどう生かされていくかの視点が欠けているんです。
ちきりん:なるほど。それは、「ブックオフと図書館をグループ内に抱える書店が持つ強み」って感じですね。
藤野:日本は、ものづくりの射程距離が短いんですよ。アップルは、修理はアップルストアでしかできないようにしたわけですね。最終的に誰が買って、誰が修理したのかを押さえる。
ちきりん:GEがそういうことを思いついたのは、グループ内にGEキャピタルという金融会社を持っていて、モノ作りにもファイナンスを絡める考え方があったからでしょうね。日本人って新品好きだから、中古市場を全然知らない。
「中古市場って貧乏人向けの市場でしょ」ぐらいの感覚でいるけど、欧米では家も中古での売買が多いし、骨董品や蚤の市で家具も買える。なんにでも中古マーケットがあるので、商品の寿命全体で価値の変化を理解することが新品開発の際の前提になっていますよね。
発明王・エジソンのずば抜けたマーケット感覚
藤野:GEはエジソンが作った企業なんですが、エジソンは日本人に最も誤解されている1人なんです。「99%の汗と1%のインスピレーション」という言葉が有名で、彼はやみくもに努力している人だと思われています。
でもそれだけじゃありません。いまだに個人の特許件数の歴史的1位なんですね。しかも「エジソンを探すには研究所か裁判所に行けばいい」っていうジョークがあるくらい、特許を破った人に対して執拗に裁判するんです。
エジソンは映写機を作りました。ミッキーマウスが跳んだり跳ねたりするものを作った。でも、彼はこれを売り出さなかったんです。一般には買えないようにして、エジソン商会のFC契約をした人にだけ売る。つまりFC加盟料のようなものを取ったんです。さらに、映写機を見ながら、お客さんはポップコーンとビールを飲みたくなるだろうから、それを売るときはエジソン商会を通させる。
ちきりん:確かに映画館ってポップコーンでかなり儲けてそう。一緒に買う炭酸飲料だって利益率めちゃ高いですし。