月刊誌を休止、「DRESS」編集長の"告白" 新たに始まる「欲望」を探す旅
このところ僕でさえあまり雑誌を買わなくなった。例えば『週刊文春』。ドコモの「dマガジン」でほとんど全て読める。月額400円で160誌以上が読み放題。『DRESS』もコンテンツ提供をしているが、Lサイズのスマホかタブレットがあれば、これで十分だ。とりわけ週刊誌などのニュースメディアはウェブとの親和性が高いので、移行はスムースだ。
薄利多売に飲み込まれる、紙メディアたち
dマガジンでは『週刊新潮』も『週刊現代』も『週刊ポスト』も、それに『フライデー』や『フラッシュ』も読める。普段、読まない雑誌も読んでしまう。そういう意味では、閲読の機会を増やしたということで、部数減に歯止めがかからない状況には一定の効果がある。
とはいえ総収入をページビューで割ってシェアするモデルは薄利多売で、コンテンツ提供社としても痛しかゆしなのだ。「dマガジン」のようなPDFで読ませるサービスは、紙からウェブへ移行する過渡期なのだと思うが、160誌も集まったと知ると、雑誌が立たされている苦境の深刻さを象徴していると思う。
2015年は紙からウェブへの流れを象徴するいくつかのニュースがあった。
いち早く『週刊アスキー』が紙の雑誌をやめた。取次4位の栗田が倒産した。栗田は地方の中小書店に強い取次だったから、書店ネットワーク崩壊の象徴だとも言える。
講談社は大手の中で紙からウェブへの流れを先進的にとらえている。2014年末には男性誌『HUgE』を休刊するなど紙メディアを整理して、『現代ビジネス』をはじめとするウェブメディアに舵を切り始めている。
『DRESS』のファッションディレクターをしていた大草直子が創刊した『mi-mollet』も評判がいい。ただ、ウェブで始めて紙も創刊する流れかと思っていたが、なかなか紙の雑誌にはならない。それだけ紙はコストがかかりすぎる「儲からない」メディアだということなのだ。
ちなみに僕が編集長をしていた頃の『STORY』(光文社の40代女性向けファッション誌)はページ当たりの制作費(印刷代を除いた編集費)が、20万円近くしていた。200ページの編集ページを作ると4000万円! 今はさすがにそんなにおカネは使えないと思うが、振り返ると雑誌のいい時代だったんだなと思う。
ウェブへの対応で最近よく評判を耳にするのは『ヴォーグ』だ。数年前からデジタルに力を入れていて、それがラグジュアリークライアントの広告出稿に結び付いている。セレブのゴシップネタや動画なども効果的に配されていて、確かに面白い。僕の知人にも雑誌のヴォーグは買わないけど、ウェブはよく見るという人が何人かいる。ファッションメディアとしてウェブに足場を移すときに、広告収入モデルにするというのが、いちばんわかりやすい。
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