月刊誌を休止、「DRESS」編集長の"告白" 新たに始まる「欲望」を探す旅

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僕にとっての「自分の力」とは、やはり編集者としての時代を切り取る「企画力」なのだと思う。どこに場を移しても説得力のある企画が立てられれば仕事は生み出せる、という自信なのだと思う。

僕が『STORY』時代に、才色兼備の35歳以上の女性たち、「美魔女」ブームを生み出したのも、「企画力」によるものだ。アラフォーの女性たちの持つ「欲望(デザイア)」を聞き取ることができたから、際立った企画になった。

『DRESS』で展開している「DRESS部活」も、働くアラフォー女性たちの将来に対する不安を知ったから生まれたものだ。その不安とは「おカネと健康と孤独の不安」で、『DRESS』として何かできることはないかと考えた。そのときに「孤独の不安」に対するソリューションとして、「趣味や好きなことでつながり合えるコミュニティ」を作ろうという発想に至った。それが「DRESS部活」だ。

あなたにとっての「自立力」とは何か

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大切なのは言語化されない欲望を知ることだ。言葉に出して言えない、あるいはまだ自分でも気づいていない欲望。言語化できる欲望は、実のところ欲望全体のごく一部にすぎない。

語られない欲望を知ることから、企画は生まれるのだと思う。マーケティングの基本はアンケートやインタビューで、消費者のニーズやウォンツを知ることから始まる。この手法は間違っていないが、すでにわかっている結果を裏付けるだけだったりする。

顕在化していない欲望を抽出するには、データの行間から読み取るか、消費者の語らないことや語れないことを聞き出す必要がある。でもデータから深い欲望を読み取るのは至難の業だし、ディープインタビューで聞き出すことも簡単なことではない。

かつてのように「新しい製品ができた。これで新しい需要が生み出せるぞ」と歓喜できたのは、すでに過去のことだ。

消費者起点の「企画力」があってこそ、際立つものは生まれる。今の時代の「企画力」とは消費者起点の欲望を見極める、「欲望ハンター」となることなのだと思っている。

僕が考える企画力については、『会社を辞めても辞めなくてもどこでも稼げる仕事術』(SBクリエイティブ)でも詳しく書いている。

この本は『DRESS』が2014年10月から3カ月の期間限定で開催した「自立塾」の講義録で、サイバーエージェントの藤田晋社長などそうそうたる講師陣が登場。「自立塾」という講座名にもあるように、いつでも会社を辞められる「自立力」を養うのが狙いだ。

会社勤めをしていても「自立力」があれば、会社に依存しないで生きて行ける。僕にとっては「企画力=自立力」だ。

このところの僕は、まだ刷り上がったばかりのこの本をひもときながら、来年からの自分自身の仕事を考えている。この本のタイトルが、『会社がなくなってもどこでも稼げる仕事術』でもいいのにな、と思いながら。

(撮影:梅谷秀司)
 

山本 由樹 『DRESS』編集長

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やまもと ゆき

1962年生まれ。上智大学新聞学科卒業後、光文社に入社。週刊『女性自身』で16年、その後週刊『DIAS』を経て、2002年『STORY』創刊メンバーとなる。
2005年~2011年まで同誌編集長。2008年には『美STORY(現『美ST』)』を創刊し、2010年から「国民的美魔女コンテスト」を開催。「美魔女ブーム」を作る。現在、株式会社gift代表取締役社長。
 

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