高市首相から直筆の手紙「かかとがすべすべになり、驚いています」17年かけて"楽天1位"とった靴下ができるまで

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「やっと思いどおりの靴下が出来上がったときは、本当に嬉しかったです。ただ、私一人の力では絶対にできなかった。これまでのご縁とご協力を思うと、事業として成り立たせて恩を返さないといけない。中途半端なことは絶対にできない。プレッシャーとの戦いが始まりました」

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「歩くぬか袋」のネーミングもアンケートを取った(写真:筆者撮影)

1回100万円の試験、総額1億円超の開発費

当時を振り返って和夫さんは、「開発するのも苦戦したけど、信用してもらうのはその10倍以上難しかった」と言う。

なぜなら、小さな地方の靴下工場が「3年の試行錯誤の末に完成しました!」と言っても、誰も相手にしてくれない。「安全性は?」「機能性は?」「耐久性は?」と必ず聞かれる。

これまで世の中に存在しない糸だからこそ、一つひとつ検証していかなければ、信用してもらえないのだ。

「通常であれば、糸を製造する紡績メーカーが商品の機能性や安全性の保証調査を担うんです。でも、うちは独自で糸を作っているので、保証試験は自費です。アイデアを形にするというのは、本当に大変なことだと思い知らされました」

有害物質を含んでいないことを証明する試験は、1回100万円。 それを16年間、毎年必ず行ってきた。

だが、それらの試験により、米ぬか繊維には数多くの有用な機能が含まれていることが実証された。保湿性・発熱性・静電気を逃す機能に加え、加齢臭まで抑えることが判明。日本アトピー協会からも推奨繊維として承認を得た。経皮吸収を研究する大学教授からは、「この素材を待っている人がたくさんいる」と言われ、現在もアドバイスをもらいながら研究を進めている。

「私にとって、この糸がすべてなんです。とにかく、良い糸を作りたい。誰にとっても優しく安全で、かつ機能性のある糸ができるのであれば、必要なお金は出します。責任は、すべて私がとると覚悟を決めていますから」

会社に迷惑をかけてはいけない——その一心で、すべての開発費は身銭を切ってきた。総額は1億円超に及ぶ。なぜ、そこまでできたのか。答えは、生きる場所がなかった男が、自分自身を証明するための執念にあったのかもしれない。

後編では、東京での商談で倒れながらも立ち上がり続けた理由と、父の背中を見て育った娘・みどりさんが家業に戻り、米ぬか繊維を次のステージへ引き上げるまでを描く。

ぬか袋を持つ和夫さん
「捨ててしまうのはもったいない」と思っていた米ぬか。検証により多くの有用な成分が含まれることが証明された(写真:鈴木靴下提供)
後編:「ゴミ箱に頭を突っ込んだ」17年かけ楽天1位とった靴下、娘がCA辞めて“日本で2番目に小さい町”の工場に入社したワケ
メリイ潤 フリーライター

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めりい・じゅん / Jun Merry

岡山県在住。大学卒業後、約16年間大手損害保険会社にて営業および営業事務に携わった後、2024年よりフリーライターとして活動。ビジネス系インタビュー記事、イベントレポート、マネーコラム等を執筆。中学時代はソフトテニス部、大学時代はラクロス部に所属。3児の母。2級FP技能士。

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