日本は対中分析のベースになる「データ」が圧倒的に不足/アメリカやオーストラリアにあって日本にはない視点

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オーストラリア戦略政策研究所が運営するクリティカル技術トラッカーは、先端分野について、論文データを基に各国の研究力を比較し、中国の台頭を定量的に示している。安全保障分野では、米・戦略国際問題研究所(CSIS)が展開するアジア海事透明性イニシアティブは、南シナ海の軍事拠点化や人民解放軍の動向を衛星画像と公開資料で継続的に追跡している。CSISは、最近では中国人民解放軍高官の粛清動向をデータとして公開し、関心を集めた。

これらのプロジェクトは年間数百万ドル規模の予算を確保し、研究者とデータサイエンティストのポストを置き、データを更新し続ける。学術論文を生み出すだけでなく、対外的に発信をすることで、政策議論の土台を提供する公共財として機能している。

日本国内で体系的に中国に関する大規模データを収集する取り組みは、従来型の図書資料の収集を除くと非常に限られている。広い意味でいえば、日本貿易振興機構(JETRO)や国際協力銀行(JBIC)が持つ日系企業調査は、有力な情報源である。

だがデータの性質上、公開されるのは集計データに限られる。シンクタンクや省庁の内部にはあるのかもしれないが、一般公開はされていない。それぞれの機関が幅広い情報をまとめようとし、結果として薄く広く情報収集することが常態化している。

既存データプロジェクトと同じことをやる必要はないが、独自な蓄積は強みにつながる。例えば、生産活動や消費動向のオルタナティブデータを探索し、継続的に収集するだけでも1つの貢献になりうる。

緻密な分析にはデータとチーム分析が不可欠

第2に、中国専門家だけに依存しない分析体制の構築を進めるべきである。

日本には中国事業や中国問題を専門とする人は多く、また関連機関も多い。上記の分析インフラの構築も、これまで個人に依存する傾向があり、結果として個々人の知見に依存する面が強いように思われる。

ある問題が発生したときに、当該分野に詳しい人が解説する、という状況は、ある程度不可避なことである。中国国内の政治や経済に関する問題であれば、中国屋さんが登場するのはある意味で当然のことでもある。一方で、近年の主要な課題となっている技術やイノベーション分野では、もはや旧来の中国屋さんの知的守備範囲を明らかに超えた問題領域が広がっている。

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