貧乏人の経済学 もういちど貧困問題を根っこから考える アビジット・V・バナジー、エスター・デュフロ著/山形浩生訳 ~貧困解消は選択の論理の理解から
著者たちによれば、貧困を削減する魔法の銃弾もなければ、一発ですべて解決できる秘法もない。まずは貧乏な人たちが発する声に耳を傾けて、彼らの選択の論理を理解することだという。しかし仮に理解できても、貧困を根絶することは難しい。貧困が何千年にも及ぶ人類の歴史とともにあったことを思えば、あと50年か100年待つのも仕方がないというのだ。
経済学とは気まぐれで目先の欲望に弱い人間の行動を分析する学問である。だから厳密な分析手法は科学的に見えても、本質には迫れない。著者たちはあえて大雑把な手法(ランダム化対象試行。訳者解説に詳しい)で、貧乏な人たちの経済生活を理解しようと試みる。その“頃合い”が評者にはたまらなく新鮮で、得心できるのである。
Abhijit V.Banerjee
米マサチューセッツ工科大学教授。印カルカッタ大学、印ジャワハラル・ネルー大学、米ハーバード大学で学ぶ。米開発経済分析研究所所長などを歴任。
Esther Duflo
米マサチューセッツ工科大学教授。パリの高等師範学校、同工科大学で学ぶ。全米芸術科学アカデミー、計量経済学会のフェロー。受賞歴多数。
みすず書房 3150円 370ページ
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら