攻守をフル支援!福岡「起業カフェ」の挑戦 ここ1年で相談件数が4倍に急増した理由

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「ほかの所でダメだしされたという相談者も結構います。でも、その中に磨けば光るビジネスの原石があるかもしれない。どうすれば成功する可能性が1%でも上がるのかを考えるのが、僕らの役割です」(藤見氏)。

そして、実際に起業し、会社を続けていくにあたって、避けて通れないのが雇用や法律の問題だ。たとえば、きちんとした取り決めもないまま仲間同士で起業し、後に取り分でもめるというケースも少なくない。訴訟にでもなれば、せっかく上手くいっていた事業も滞ってしまう。

そこで、カフェ内には政府の国家戦略特区事業として雇用労働相談センターを設置し、弁護士や社労士といった労働に関する専門家による相談窓口を設けている。さらに、週に一度は「個別相談DAY」として、行政書士や司法書士、税理士、弁護士といった専門家や日本政策金融公庫に相談することが可能だ。

つまり、ビジネスプランをブラッシュアップする「攻め」と会社を存続させるための「守り」をワンストップで、しかも無料で相談できるのがこのカフェの特色である。

高齢者支援の新ビジネスを構想する平尾さんのケース

カフェ内の雇用労働相談センター。オープンな窓口だ

カフェに相談に訪れた一人、平尾京子さんは4歳と1歳の2児の母だ。今年3月に起業し、合同会社ハートステーションを設立。以前は介護支援専門員(ケアマネジャー)として介護事業所にフルタイムで勤務していたが、もっと子どもと過ごす時間がほしいと考え、起業の道を選んだという。

「人から紹介されて来たのですが、こうした場所があることも、特区に指定されていることも、会社設立当初は知りませんでした。無料で法律の専門家に相談でき、助かりました。カフェの一角ということで、構えずに行けるのもいいですね」(平尾さん)。

現在会社は、要介護認定の事務受託法人として業務を行っているが、地域の子育て中のママが高齢者の生活支援を行うビジネスモデルを考えている。平尾さんがカフェを訪れたのは、このビジネスモデルにおける雇用のあり方などが法的に問題ないかを相談するためだった。

家庭も大事にしながら少しずつ社会復帰を目指す女性と高齢者をつなぐことで、地域福祉に貢献したいという平尾さん。今後もアドバイスを受けながら、準備を整えていくつもりだ。

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