まるでゆでたような状態…カメの死が教える善意の悲劇"――獣医病理医が遺体に抱いた違和感。不適切な飼育情報が招いた悲しい出来事の顛末

✎ 1〜 ✎ 22 ✎ 23 ✎ 24 ✎ 25
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

カメに日光浴をさせるときは、飼育ケースの中に風通しと日陰をつくり、環境温度が急激に上がらないようにしなくてはなりません。

種類や大きさ、季節で適切な日光浴の時間は変わりますが、一般的に夏は短め(最長でも数十分)、それ以外の季節、例えば今のような冬であれば数時間は必要です。

カメが日光浴をしている間は、しっかり様子を見てあげましょう。

飼育水やケース内の温度が上がりすぎていないか、カメの呼吸が荒くなっていないか、動きに異変はないか。野外の大きな池ではないのですから、直射日光の下に放置することは禁物です。

温度管理ということでは、野生のクサガメやニホンイシガメのようなミズガメ(水棲・半水棲のカメ)は冬眠します。ただし、飼育下で環境温度が十分に保たれていれば、そのまま冬眠せずに越冬します。これを中途半端な温度で飼ってしまうと、問題が起きます。

冬眠に入れず、かつ代謝を保てるほどの熱もないと、衰弱してそのまま死んでしまうことがあるのです。

冬眠をさせるのかさせないのか、飼い主さんは事前に方針を決めておき、それぞれに合った温度(冬眠させないなら25℃以上)で飼育する必要があります。

転落死する例・脱水死する例

カメがベランダなど高所から転落し、骨折や内臓損傷などで命を落とすという事故もよく起きます。カメは意外と簡単に飼育ケースから脱走しますので、網蓋(あみぶた)や高い壁などをきちんと設けておきましょう。

また、ミズガメ、リクガメ(陸に棲息するカメ)を問わず、脱水をきっかけにしてしばしば体調を崩します。まわりに飼育水があっても、汚れていれば、ミズガメはそれを飲みません。

カメは老廃物を尿酸として排出しますが、脱水が進むと尿酸が結晶化し、臓器に沈着したり腎臓や膀胱で結石になったりするのです。過去にぼくは、食欲低下ののちに死亡した体長約70センチ・41キロのケヅメリクガメの病理解剖で、膀胱内に直径20センチほどの巨大な結石を見つけたこともあります。

今回の依頼者さん(のお子さん)は、「田んぼの脇から連れてきたクサガメを、図らずもゆで殺してしまった」という苦い経験をしたことになります。

その経験を教訓とし、次に迎える動物のために生かしてほしい――。
そんな想いを込めて、ぼくは病理診断の結果をお伝えするとともに、死んだクサガメの体の中で何が起きていたのか、クサガメはどう飼われるべきだったのかを、親御さんに説明しました。

次ページ無知が原因で起こる死を減らしたい
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事