まるでゆでたような状態…カメの死が教える善意の悲劇"――獣医病理医が遺体に抱いた違和感。不適切な飼育情報が招いた悲しい出来事の顛末

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甲羅を構成する甲板(こうはん)という薄い層の下には毛細血管が分布していて、甲羅を温めると循環する血液によって全身が効率よく温まります。

もう1つが、体を清潔に保つため。甲羅や皮膚を乾燥させつつ紫外線を浴びることで、体表に付着した寄生虫や病原体などを死滅させます。感染症などにかかりにくくしているわけです。

そして3つめの理由は、これは人間も同じなのですが、紫外線を浴びて体内でビタミンDを合成するためです。

ビタミンDは、腸でのカルシウムの吸収を促進し、骨の正常な形成を助け、血液中のカルシウム濃度の調整にも関わるなど、生命活動に必須の栄養素です。食物を摂取して取り込めるほか、皮膚に紫外線が当たることでも生体内で合成されます。

ただ、食餌からだけではビタミンDは不足しがちなため、紫外線を浴びること、つまり日光浴によって量を補うことが欠かせません。これはカメのような昼行性の爬虫類にかぎらず、人間でも「1日15分は日光を浴びましょう」などとよく言われますよね。

甲羅が主にカルシウムでできているカメは、日光浴が足りないとビタミンDが不足してカルシウムが利用されにくくなり、甲羅や骨が柔らかくなったり変形したりすることがあります。

したがって、カメをペットとして飼う場合、やはり日光浴(あるいは爬虫類用の紫外線ライトの照射)が必要です。

まるで「虐待」の末の死

飼育水がお湯のように温かかったこと、遺体の温度が高かったこと、全身の臓器のうっ血、感染症を示す所見が見られないこと、そして急死する直前まで日光浴をしていたこと……。

これらを総合すると、このクサガメの死因は、日光浴中の過熱による熱中症だと考えられました。

昨今は、9月といえどもまだまだ夏真っ盛り。大量の水がある野外の池ならともかく、多少の水を入れただけのプラスチックケース内は、相当な高温になったことでしょう。

ある程度の時間が経っていたはずの飼育水がお湯のように温かかったことを考えると、このクサガメはゆでられていたも同然だったと思われます。もちろん飼い主さんが意図したことではないでしょうが……状況は「虐待」に近いものだったと言わざるをえません。

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