中国軍「実戦派トップ」を排除した習近平の暴走。軍の機能不全を承知でイエスマンを並べる"台湾侵攻"の危うい現実

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こうした軍幹部の綱紀粛正の動きは2023年から続いていましたが、最近になって加速しています。前任者の失脚で昇進した軍幹部が、すぐに失職する例も少なくありません。粛清の規模としては、ソ連軍の幹部の大半が処刑されたスターリンによる1937〜38年の大粛清に比べられます。

張氏と劉氏の失脚で、中央軍事委には実戦経験を持つメンバーはいなくなりました。こうした大規模な粛清は台湾有事を含む軍の作戦遂行能力に悪影響を及ぼすのは明らかですが、なぜいっこうに収束せずに加速しているのでしょうか。

軍への警戒生んだ地理的背景

それを理解するには、まずランドパワーと呼ばれる大陸国家、中国の地理的な条件を知る必要があります。中国の陸続きの国境の長さは約22000キロメートルに及びます。世界最長の陸上国境で、14カ国と接しています。

有史以来、こうした陸上国境を巡ってユーラシア大陸で無数の戦乱が起きてきました。ランドパワーは地続きで人の移動が簡単なため、多数の民族が入り乱れた歴史から多民族国家であるのも特徴の一つです。中国も主要民族の漢民族のほかに、55の少数民族が存在しています。

国土が広く多民族の国は国家分裂のリスクを抑え込むため、中央集権の非民主的な政治体制を取る例が多く見られます。地域や民族ごとに国が分かれて内乱に陥れば、住民の生活水準が低下し、外国勢力の侵略を許すことになるためです。現在の中国政府も国内の安定を最重視し、民主化に否定的な姿勢をみせてきました。

ただ、非民主的な政治システムには、政府が選挙を通じて統治の正統性を確認できないデメリットがあります。現在の中国に言い換えれば、有権者が選んでいない習近平氏の権力維持を国民に納得させるすべが乏しいということです。

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