介護スタッフを小突く、夜間に歩きまわる…家族もつらい「認知症の行動・心理症状」を和らげる新薬への期待【専門医を取材】
「こんなに急に良くなるものかってびっくりです。今日はデイサービスがない日なのに、お父さん、表に出て車を待っているんですよ。『今日はお休みの日だよ』って言っているのにねえ」
電話口から聞こえてくる女性の声。同院の新規患者で、取材日の2日前から抗精神病薬を飲み始めたという男性患者(90)の妻(89)だ。男性が薬を服用し始めて間もないことから、髙瀬さんはその様子を電話で聞いた(妻の許可を得て、筆者も一緒に話を聞かせてもらった)。
男性にはデイサービスで介護スタッフを小突いたり、自宅では夜間に歩き回ったりするなどの症状があった。デイサービスからの相談を受け、髙瀬さんが診ることになったというのが経緯だ。
変わりようにスタッフも驚く
妻の話によると、前日(服用を開始した翌日)のデイサービスでは、男性はスタッフを小突くこともなく、終始陽気で、歌まで歌っていたという。その変わりように介護スタッフが驚いていたそうだ。
服用初日の晩は午後7時から11時までよく寝ていたようで、妻は「私もその間、眠れました。そのあとも、下の部屋の中でうろうろしていたようだけど、静かでしたよ」と明るい声で話した。
新しい薬はブレクスピプラゾール(商品名レキサルティ)といい、海外では以前から使われている。脳の神経伝達物質であるドパミンの伝達機能を調節するとともに、セロトニンにも作用することで、うつ病や統合失調症の精神症状を改善する。
認知症の症状には大きく分けて2つある。1つ目は記憶障害や、時間や場所がわからなくなる見当識障害、判断力・理解力の低下などによる「中核症状」。2つ目は「行動・心理症状(BPSD)」だ。
中核症状は認知症患者に共通して現れるのに対し、BPSDは家族や周囲の人々との関わりや環境のなかで現れる症状で、個人差がある。
具体的には、暴言・暴力、抵抗、うろつき、不安、焦燥感、幻覚、抑うつなどが起こる。その背景には、もの忘れや自分の思いが伝わりにくいことによるイライラや不安、体調不良による不快感といった、さまざまな要因があるという。
「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン第3版」によると、BPSDが現れるのは認知症患者の60~90%ほど。また、BPSDの出現や悪化は、患者の尊厳の低下、介護負担の増加、経済的コストの増加、施設入所の早期化、患者・介護者の生活の質(QOL)の悪化につながる。


















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