「死了么(死んだか?)」という露骨な名前の生存確認アプリが映し出す現代中国の孤独、AIブームの影で深まる虚無感

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中国当局を逆なでし、世界に波紋を広げたとはいえ、この製品のコンセプトは悔しいほど秀逸だ。自分が思いつかなかったことが悔やまれるほどだ。

大手テック企業やスタートアップがこぞって次のヒットAIアプリを開発しようと競う中、実際のユーザーが最もよく口にする不満は、こうしたツールの多くが、問題を見つけようとするソリューションであることだ。

友人からの2行のメッセージを要約してもらう必要はなく、基本的な人間関係にソフトウエアが介入してくると、便利というより煩わしく感じることもある。

「メメント・モリ」のようなもの

「死んだか?」はその真逆を行く。気の利いたことをしようとせず、純粋に実用的だ。独り暮らしの人々にささやかな安心感を提供する。たとえその存在自体が、深刻化する孤独のまん延を浮き彫りにしているとしてもだ。

人気のフードデリバリーアプリ「餓了麼(おなかすいた?)」をダークにもじったこの名称は、競争社会を嫌う「寝そべり族」と呼ばれるZ世代のニヒリスティックなユーモアを体現している。ネット上では、多くの中国の若者がこのアプリを不謹慎とは捉えず、一種の「メメント・モリ(『死を忘れるな』という警句)」と受け止めている。

生活のより多くの場面にAIを組み込もうとする動きが注目を集めるのは当然だ。しかしアジアをはじめ世界各地で、高齢者向けテクノロジーは今後急成長が見込まれる分野でもある。

中国当局は、高齢者の購買力向上や新しいデジタルプラットフォームへの適応意欲を挙げ、「銀髪経済(シルバー経済)」を将来の成長エンジンと位置づけている。政府は、こうしたイノベーションや、それが提起する不都合な問いを抑え込むのではなく、これらのツールを歓迎すべきだろう。

全米退職者協会(AARP)の予測によると、米国では高齢者のテクノロジー向け支出が30年までに1200億ドル(約18兆4000億円)に達する見通しだ。一方で、50歳以上の人の59%が、こうしたテクノロジーは自分たちの年齢層を念頭に設計されていないと感じている。開発者にとって、この市場を開拓し、そのギャップを埋める世界的なビジネスチャンスは膨らむ一方だ。

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