さらに、インド太平洋地域を担当するアメリカ海軍第7艦隊が横須賀を拠点とし、太平洋正面は米軍の圧倒的な制海・制空権によってカバーされているとの認識も、日本側に一定の安心感をもたらしてきた。航空自衛隊は、硫黄島の地上レーダーや早期警戒管制機(AWACS)を活用して警戒監視を行ってきたが、島嶼が点在し、海空域が極めて広大な太平洋では、常時・継続的な監視体制にはおのずと限界がある。
実際、日本が太平洋上で恒常的に使用できる飛行場は、海自が運営する硫黄島と南鳥島の両航空基地にとどまっている。ただし、南鳥島の滑走路は約1400メートルと短い。たとえ、短距離離陸・垂直着陸が可能なF35B戦闘機であっても、インフラなども整っていないことから運用が難しい。
「後方」という前提を揺るがす中国軍の太平洋進出
太平洋側が「後方」と見なされた前提を崩したのが、中国軍の太平洋進出と挑発行動だ。中国海軍は第1列島線を越え、西太平洋での活動を常態化させている。
象徴的なのが2025年5〜6月の事例で、中国海軍の空母「遼寧」と「山東」が太平洋で同時活動し、艦載戦闘機などの発着艦を計1000回以上実施した。さらに「遼寧」は南鳥島の南西約300キロを航行し、第2列島線を越えて太平洋へ進出した。中国空軍の爆撃機や早期警戒機、電子戦機も西太平洋へ進出する動きを強め、海空軍力を統合した太平洋進出が常態化している。
こうした中国軍の行動を理解するうえで、注目されているのが、中国側で進む太平洋戦争期の旧日本軍研究である。中国人民解放軍軍事科学院や中国人民解放軍国防大学といった軍事研究機関や軍事学術誌では、太平洋戦争期の旧日本軍が島嶼をどのように拠点化し、アメリカ軍の補給や増援を妨害しようとしたのかが、作戦・補給・情報の各側面から分析されている。
具体的には、トラック諸島、サイパン、硫黄島といった要衝が研究対象だ。旧日本軍が平時には民生名目で港湾、滑走路、通信施設、気象観測拠点などのインフラを整備し、有事に軍事利用へ転用した点が強調される。


















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