「もうお前のおやじに金は渡しとんじゃ」 朝ドラ「ばけばけ」売春禁止も"なみ"のような遊女がいた理由

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明治5年、「娼妓解放令」と呼ばれる太政官布告が出されて、娼妓・芸妓たちの借金がチャラになった。

いかにも、弱き立場の女性のことを第一に考えてのことのようにも思えるが、布告の内容をよく読むと、印象はちょっと違ってくる。

「太政官布告第295号」、通称「娼妓解放令」と呼ばれる布告には次のようにある。

「人身を売買するは古来の制禁の処、年季奉公等、種々の名目を以て其(その)実売買同様の所業に至るに付、娼妓・芸妓等雇入(やといいれ)の資本金は贓金(そうきん)と看做(みな)す」

人身を売買することは禁止されており、娼妓・芸妓を雇い入れる資本金は「贓金」、つまり、「不正な手段で手に入れた金」とみなす、とまで言っている。

江戸時代は、幕府が吉原や島原などの遊郭を公認していたことを思えば、かなり踏み込んだ布告だと言えるだろう。売春を撲滅させるという意思すらも感じ取ることができる。

だが、続きを読むと、少し複雑な思いになってくる。

「同上の娼妓・芸妓は人身の権利を失うものにて、牛馬に異ならず。人より牛馬に物の弁済を求むるの理なし。故に従来同上の娼妓・芸妓へ借す所の金銀並びに売掛滞金等は一切債(せめ)るべからざる事」

後半はいいだろう。娼妓・芸妓への借金はないものにするとしている。だが、その結論に至るための理屈がいただけない。

「娼妓・芸妓のように身を売る女性はすでに人権を失っているのだから、牛や馬と変わらない」と、政府の文章とは思えない表現がなされているのだ。そのうえで、「牛や馬に物の弁済を求めるのはおかしいから、借金を返す必要もない」と結論づけている。

娼妓・芸妓がそれくらい悲惨な状況だと言いたいのだろうが、牛や馬と一緒にするのは、あまりにも屈辱的だろう。

身売りをする女性を減らすつもりは政府になかった

女性たちも、何も好きこのんで身売りをしていたわけではない。当時の貧しい女性は、そうした仕事で生計を立てるしかなかったのだ。

抜本的な対策をすることなく、ただ借金だけ帳消しにして、彼女たちの存在を「なかったことにする」のは、乱暴すぎる方法だ。借金がなくなっても、楽になるのは一時的なことである。代わりになる仕事を与えられることもなく、自分の身を売る仕事から抜け出ることは、ほぼ不可能だろう。

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