「ベネズエラ急襲撃」はロシアにとって追い風か/お互いさまの国際法違反だが、同盟国喪失とアメリカ軍の手際のよさで国内のプーチン批判高まる
つまり、「ドンロー主義」の世界観は、勢力圏を分けて支配しようというプーチンの世界観と理念上、合致するのだ。
実際、外交筋によると、プーチン自身が、ロシアにとって中南米で最大の同盟国であるベネズエラから手を引くから、君たちはウクライナにかかわらないでくれというディールをトランプのアドバイザーに提案したとの情報がある。
しかし「勢力圏分割」の動きはまったく不透明だ
ただ、今のところ、この勢力圏分割をめぐる両国間の議論はまだ表面化しておらず、本当に米ロが実現に向けて動き出すか否かは不透明だ。
これには大きな要因が3つある。
まずロシアが今回のベネズエラへの攻撃を批判していることが挙げられる。ロシア外務省は国際法および国連憲章に違反する「武装侵略行為」と断じる声明を出した。自国がウクライナ侵攻をしていながら、同様の侵略批判をアメリカに浴びせる手法は、先述した「お互いさま」効果を狙った反論ともいえる。
さらにもう1つは、今回のベネズエラ攻撃の背後にあるトランプ政権の戦略の全容が不明なことが挙げられる。ロシアとしてはアメリカの出方を当面見守る方針なのだろう。トランプ政権がメキシコやコロンビアも威嚇し、デンマーク自治領グリーンランド領有に向け、武力行使の可能性にも言及していることも影響していると思われる。
同じ北大西洋条約機構(NATO)同盟国であるデンマーク領に、アメリカが武力行使することは常識的には考えられない。しかし、「アメリカ・ファースト」という地政学的野心をむき出しにするトランプ政権であれば、あながちありえない事態ではないだろう。
そうなれば、米欧の分断・対立という事態が現実になる。長年大西洋を挟んで米欧間に楔を打ち込むことを外交戦略上の主要な課題としてきたロシアとしては、こうした事態の行方がはっきりすれば、勢力圏の議論を始めるつもりなのではないか。
これに絡んで注目すべき動きがある。先述したロシア外務省の批判をよそに、プーチンが本稿執筆時点で、対米批判を含め、沈黙を保っていることだ。勢力圏問題などを念頭にトランプとの個人的関係が悪化することを回避しようとしているのではないか。



















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