「ベネズエラ急襲撃」はロシアにとって追い風か/お互いさまの国際法違反だが、同盟国喪失とアメリカ軍の手際のよさで国内のプーチン批判高まる

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旧ソ連のアルメニアもロシアから十分な支援が得られなくなったことを理由に、ロシアの勢力圏の軌道から外れていった。こうしたロシアの相次ぐ退潮は、ウクライナ侵攻に全力を注入しているため、他の地域に軍事力を振り向ける余力がなくなったからだ。

こうした状況に対して、クレムリンを支援する愛国的極右派勢力から異例の批判が出始めた。「プーチンの頭脳」とも呼ばれ、ウクライナ侵攻の必要性を執拗に主張した極右派の思想家、アレクサンドル・ドゥーギン氏がその代表的存在だ。

仲間内からも批判が噴き出した

同氏は、「われわれの友人だった政権が1つずつ崩壊していく」と語った。14年にクリミア併合を強引に実現し、「勝利者」として国民から熱狂的な支持を受けたプーチンにしてみれば、この身内とも言えるドゥーギンからの発言は相当こたえる批判だ。

だが、ロシア国内では、マドゥーロを救えなかったこととは別な側面をめぐり、プーチンへの、より厳しい批判が湧き起こっている。

アメリカ軍のマドゥーロ大統領拘束は電撃的な成功を収めた(写真:Bloomberg)

作戦開始から数時間でマドゥーロとその妻を拘束し、アメリカに連行した米軍の電撃的急襲劇の手際のよさが、開始から4年も経過しようとしているのに、いまだにウクライナのドネツク州の全域すら陥落させられないロシア軍の侵攻のもたつきを際立たせ、国民の不満が高まっているのだ。プーチンからすれば、面目丸つぶれの事態だ。

さらに世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラにおけるロシアの石油開発権益の行方もプーチン政権にとって頭の痛い問題となりそうだ。

生産量が低迷している石油の増産に向け、トランプ政権が当面主導的役割を果たす意向とみられている。そうなれば、ロシアが保有する一部石油権益も打撃を受けるとみられる。

さらに今後、増産が軌道に乗れば、国際的な原油価格への引き下げ圧力となる。そうなれば、原油輸出が主要な外貨獲得源になっているロシアは一定の打撃を受けるだろう。

以上のように、プーチン政権にとっての損得関係を詳細に点検してみると、プラス面は潜在的なもので、マイナス面の方が大きいと言えそうだ。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。また、2024年7月9日付の東洋経済オンライン「金正恩がロシアに工兵部隊の派遣を約束した!」で、北朝鮮がウクライナ侵攻への派兵を約束したことを世界で最初に報じた。

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