日本が"唯一の例外"…。『アバター』最新作が"世界で好調"!なのに「日本では出足が鈍い」背景。世界歴代1位&3位シリーズは洋画不況を覆すか

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その背景にあるのは、世界でも特殊と言われる日本市場の傾向だ。

本シリーズの最大の魅力は、圧倒的なスペクタル感の映像世界に没入し、壮大で美しい大自然と不思議な生き物たちの生態に触れながら、海中を自在に泳ぎ、大空を華麗に舞う激しいバトルアクションを、体感として味わうことだ。

映画館の大スクリーンでこそ最大限にその価値を楽しめるイベントムービーであり、映画の醍醐味がそこにある。

また、そこで描かれるのは、多様な民族が共存する惑星の先住民と、他の惑星からの侵略者をテーマにする戦いの物語。世界共通の普遍性がある王道のストーリーだから、世界中で受け入れられて大ヒットしている。

ところが、日本人特有の感性に刺さる物語がヒットする日本市場では、同テーマに対する親和性が高くない。登場人物の心の機微や繊細な感情の揺れに共感して、そこで起きる日常の一部のような出来事に感情移入できるかが、作品評価に大きく影響する。

もちろん観客の趣向やトレンドは時代によって変わり、ハリウッド映画のスペクタルを楽しむ映画ファンも多い。それでも、昨今の日本市場で、不特定多数の観客を動かすのは邦画であり、その多くが日本社会を題材にした物語だ。

『アバター』シリーズに限らず、ハリウッド大作をはじめとした洋画が苦戦を強いられる大本の要因がそこにある。

単なる娯楽大作では終わらないポテンシャル

アバター
(写真:『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』(C)2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.)

本シリーズの3作は、設定がそれぞれ少しずつ変わるが、基本的な物語の構造は同じだ。侵略者から土地と生活を守るための先住民の戦いの物語であり、そこに、血のつながりだけではない家族の絆や民族の多様性、自然と動物の調和といったテーマが織り込まれる。

今作を観て感じたのは、エンターテインメント性が強いスペクタクル作品でありながら、そこに生きる人々の本能のぶつかり合いや、戦闘における敵や味方の生死が生々しく描かれ、単なる娯楽大作では終わらないメッセージ性を有していること。

ハリウッド映画の王道である家族や親子の絆、愛は色濃く描かれるが、それが壮大な世界観のスペクタクル映像に圧倒されるなか、自然に心に響いてくる。そのバランスや巧みな伝え方は、世界1位と3位の大ヒットシリーズだけある。気づけば物語に没入し、感情移入していた。

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