Onシューズが日本人気を獲得した訳、「今まで"痛くないシューズ"はなかった」……素材でなく"構造"で「足が勝手に前へ転がる」世界特許の中身
旅との相性が抜群の一足だ。最大の特徴は、公式に「かかとを踏んでOK」という珍しい構造。空港の保安検査やホテルのロビーなど、脱ぎ履きの多い場面でスリッポンのように扱える。
アッパーは薄くて軽く、ぺたんと畳めるため、キャリーケースの隙間にもすっと入る携帯性を備える。一方で、かかとを立てて履けば通常のスニーカー並みにサポート力が働き、観光で1万歩を超えても疲れにくい。
オン社員が「出張時に必ずバッグへ入れる」と語る実用性の高さも象徴的だ。価格は1万9800円(税込)。旅先で“よく歩く人”ほど価値を感じるモデルである。
“プレミアム=高い”の誤解をどう超えるか
オンのユーザーの中心は30代後半〜50代だ。
一方で若い世代にはいまだに、「高そう」「手が届きにくいブランド」という印象が残りやすい。
しかし、実際の価格帯は2万円前後。市場全体のスニーカー価格が上昇するなかでは“標準域”であり、毎日使う道具への投資として見ればむしろ合理的だ。
機能と耐久性、そして“疲れにくさ”という体感が伝われば、若い層への広がりは十分に見込める。
取材の最後、北井さんはこう語った。
「オンは、ただ軽い靴をつくる会社ではありません。
IGNITE THE HUMAN SPIRIT──動くことで、人の心に火を灯す。それがオンのミッションなんです」
ブランドロゴの「On」はスイッチを模している。履いた瞬間、日常のどこかで“カチッ”と入る小さなスイッチ。
歩きたくなる、階段を選んでみる、一駅分だけ歩いてみる……。
その積み重ねが“行動の変化”を生む。オンが提供しているのは、単なる足元の快適性ではなく、日常の選択を前向きに変える仕組みそのものだ。
競争の激しいスニーカー市場で、ひとつのブランドがここまで強い存在感を示し始めた理由──。それは、製品ではなく 「行動」や「体験」そのものをデザインしているからにほかならない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら