Onシューズが日本人気を獲得した訳、「今まで"痛くないシューズ"はなかった」……素材でなく"構造"で「足が勝手に前へ転がる」世界特許の中身

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オンは「高級ブランド」ではない。しかし“安売りはしない”。これは、価格競争ではなく体験価値で選ばれるブランドを目指す戦略意思だ。

素材、デザイン、店舗体験、サービス、ブランドストーリー。顧客が触れるすべての接点を統一的に高める――。これがオンのいう“プレミアム”の意味である。

興味深いのは、同じスポーツ由来でも、目指す場所がブランドごとに異なる点だ。

例えばアシックスの強みは、世界トップレベルのスポーツ科学を背景にした“機能性能の深掘り”。ニューバランスは、アメリカ発の伝統ある“フィット哲学”と“履き心地の文化”を軸にしている。

その一方でオンが磨き続けているのは、「履いた瞬間の感覚」「日常に溶け込むデザイン」「店舗を含めた一連の体験」といった、機能×感性×体験の3層構造だ。

北井さんはこう語る。

「オンはオンらしくある。それをブレずに積み上げてきたからこそ、今の評価につながっています」

“らしさ”とは、他社と競うことではなく、自社の体験価値をどれだけ一貫して磨けるか、という姿勢を指している。

ランニング性能をそのまま日常へ──行動が変わる理由

シューズ
(撮影:長田慶)

オンにはウォーキング専用モデルがほとんど存在しない。理由は明快だ。

「走れる靴は、日常でも快適だから」

その代表例がCloud 6。もともとはランニングモデルだが、その軽さと反発力が評価され、今では“都市生活の新定番”となった。

ユーザーからはこんな声が届くという。

「気づけば1駅歩いていた」「疲れにくいから階段を選ぶようになった」

道具が変わると、行動そのものが変わる。ここにオン最大の特徴がある。30代後半〜50代の支持が厚い理由を、北井さんはこう説明する。

「夕方に来る“足裏の重さ”が明らかに減ったという声が多いんです」

この世代が重視するのは“即効性のある体感価値”なのだ。

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