米国・イスラエルvs.イラン、戦争の可能性は低い

拡大
縮小


戦争に疲弊する米国

さらには、米国が戦争に疲れていることに留意しなければならない。米国は、2011年の同時多発テロを受けてアフガニスタンに侵攻し、その後、イラクに攻め込んだ。多くの戦略家が、タリバンをたたくためにアフガニスタンに侵攻したのは正しかった、と考えている。

その一方、ほとんどの戦略家は、03年のイラク侵攻は重大な誤りだったと判断する。エコノミストたちはいまだに、この二つの戦争に要した費用の総額を算出しようと試みている。アフガン戦争は、すでに米国史上最も長い戦争となり、いまだに終着点が見えない。連邦議会は約1兆ドルを“予算外”で支出した。米国民は戦争に疲れ切っているのである。

米国の軍隊は、イラクとアフガニスタンでの戦争でかなり体力を消耗した。戦闘部隊を展開する際のコストに加えて、展開後に膨大な人件費がのしかかっている。また、何千人もの傷病兵が、帰還後に入院や療養を余儀なくされている。

オバマ大統領は、判断を迫られている。イランを攻撃しない(あるいは、イスラエルによるイラン攻撃を支持しない)のなら、弱い大統領だと見られるおそれがある。

では、疲弊した米軍を新たな戦争に投入すべきなのだろうか。イランとの戦争が始まれば、原油価格が高騰し世界経済が打撃を受けるのは確実だ。ここ数カ月間、戦争勃発の懸念が原油価格を押し上げ、オバマ再選の可能性を低下させている。

オバマ大統領は、大きなリスクテイクを恐れない人物だ。1年前には、米国特殊部隊がパキスタンに潜伏していたオサマ・ビンラディンの隠れ家を急襲し、世界の注目を集めた。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT