米国・イスラエルvs.イラン、戦争の可能性は低い

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だが、米国民は、イラクとアフガニスタンで10年間も続いた戦争にうんざりしている。

米国政府にとって大きな懸念は、中東における勢力バランスだ。米軍がイラクから撤退した今、「イラクへのイランの影響力が過剰に拡大するのをどう防ぐか」が課題となっている。この答えのカギは、米国とアフガニスタンとの間で最近まとまった、米軍駐留10年間延長に関する合意だ。この決定は超党派でなされ、共和党のジョン・マケイン上院議員やリンゼー・グラム上院議員も強力に支持した。両議員は、アフガニスタンが再びテロの温床となることを懸念している。

大きな問題は、誰が実際にイランを動かしているのか確実にはわかっていない点だ。イランは形は民主制を採っているが、イスラム教指導者が権力を掌握している。大統領のマフムード・アフマディネジャドは、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師の指図に服しているが、関係はあまりよくない。また、大統領とハメネイ師のいずれが国際社会との対話に積極的かは依然明確でない。

イランは核開発、イラクへの影響力拡大、中東地域での勢力拡大など、今後も多くの挑戦を突き付けてくるだろう。世界は核武装したイランと共存できるのだろうか。軍事行動を取るとしても、米国が陸軍部隊を投入する可能性はかなり低い。疲弊した米国には、戦争ではなく休息が必要だ。

(週刊東洋経済特約・ニューヨーク駐在:ピーター・エニス =週刊東洋経済2012年6月2日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。Photo:U.S.Navy
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