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「忘れられていた日本人」フィリピン残留二世/いまだ清算されていない戦後

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  • 柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表
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新刊の特色は、フィリピンに残る二世らの人生を紹介するだけではなく、日本に住む二世とその子孫らを訪ね、日本国籍取得後の暮らしや同居する子孫の三世、四世らが抱える課題についても検討を加えていることだ。

大野氏が新聞記者のころ、取材や執筆が直ちに大きな反響を呼んだわけではなかった。しかし連載を読んだ野党議員が国会で取り上げたことで、日本政府は88年3月、初めて現地で当事者からの聴き取り調査に踏み切った。

90年代には東京の弁護士が残留二世の支援団体を立ち上げて国籍取得の手助けを始めた。ダバオに赴任した外交官は任期中、前例のないほどの熱意を持って日本国籍を求める残留二世数十人から聴き取りを続け、その報告書が各地の家庭裁判所に提出され、就籍を後押しした。いずれも『ハポン』を読んだことが積極的な二世支援活動の端緒だったという。

大野氏以外にも残留二世の苦境を取り上げた新聞記事やテレビのドキュメンタリー番組は数多くあった。しかし包括的かつ継続的に報道したのは大野氏だけだ。

戦後処理の解決より、問題の消滅が先か?

支援団体の活動やメディアの報道により、40年前に比べて残留二世の存在は世間に知られるようになった。しかし問題が解決したわけでないことは本書を読むとよく理解できる。

NPO法人「フィリピン日系人リーガルサポートセンター」(PNLSC)は03年から就籍などの手段で700人近い在留二世の国籍取得を実現してきた。聴き取りと証拠集めには手間と時間がかかり、年間30人の就籍申し立てが精いっぱいという。

二世の年齢を考えると、時間との闘いだ。救済されなければ彼らは無国籍のままであり、戦後処理の問題が1つ解決しないまま消滅してしまう。

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【石破前首相の訪比と二世の国費訪日】

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