日本へのLNG輸出を米国が決められない訳--リチャード・カッツ


2月2日、スティーブン・チュー・エネルギー長官は、「天然ガスを輸出するということは、米国へ富が流れ込むということだ」と述べ、天然ガスの小規模な輸出が景気好転に役立つとの見解を示した。

その意見に対し反対派は、輸出は国内の天然ガス価格の上昇を招く、と主張する。現在、米国の天然ガス価格は、他国よりもずっと安価だ。そのおかげで、たとえば米国の化学薬品会社は、グローバル市場で価格優位性を享受している。

エネルギー省のエネルギー情報局やデロイト・センター・フォー・エナジー・ソリューションズなどの調査によると、米国が1日当たり60億立方フィートの天然ガスを輸出した場合(米国の現在の生産高の10%以下に当たる)、天然ガスの価格は、15年から35年にかけて、輸出しなかった場合と比べて2~9%程度上昇すると推計されている。

だが、たとえ価格の上昇につながるとしても、米国は、アジアにおける最も重要な同盟国である日本がエネルギー不足に苦しむのを、傍観することができるだろうか。米国は、日本、欧州諸国、インドなどの国々に対してイランからの原油輸入を削減するよう要請している一方で、LNGという代替燃料の入手を否定することができるだろうか。

米国はLNGの大きな余剰を抱え、貯蔵タンクが満杯になっている。そのため、価格は大幅に下落し、一部の企業はガス掘削施設の停止を余儀なくされている。そうした状況において、輸出は需要と価格の安定化を促進するだけでなく、米国に健全な天然ガス産業を定着させることにもつながる。

しかし残念ながら、選挙重視の政治の現実を考えれば、オバマ大統領は大統領選挙後まで認可を先送りすることになるのだろう。

Richard Katz
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。週刊東洋経済特約(在ニューヨーク)

(週刊東洋経済2012年6月2日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
photo:lightgraphs CC2.0 BY
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