「意外と落とし穴が」腎臓寿命を守る水分摂取→「トイレが近くなるから水を飲まない」は絶対にNG

✎ 1〜 ✎ 11 ✎ 12 ✎ 13 ✎ 14
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ただ、腎臓が悪い人の水分摂取に関しては「例外」もあります。

それというのも、慢性腎臓病がステージ5の「高度低下~末期腎不全」まで進んでしまうと「水分制限」が必要になる場合があるのです。このレベルまで腎機能低下が進んでしまうと、尿量が減少して体内に水分がたまって体がむくんできます。このむくみが重度になると、肺水腫や心肥大を起こして場合によっては命に関わる可能性もあり、そのため水分の摂取制限が必要になるのです。

また、さらに病状が進んで腎不全になり、人工透析を受けている人も厳しい水分制限が必要となります。人工透析になると尿として排泄される水分がほとんどなく、摂った水分の多くが体内にとどまることになるため、摂取水分量を厳重に管理しなくてはならないのです。ただ、水分は不足させてしまっても危険なので、人工透析を受けている方は主治医とよく相談しつつ、必要十分な量の水分を摂っていくようにしてください。

水分は「水」で摂るのが基本

上記以外の方は、たとえ慢性腎臓病でも水分制限の必要はありません。むしろ、腎臓の血流確保のためにも、日々たっぷり水分を摂るようにしてください。

なお、言わずもがなのことかもしれませんが、水分は「水」で摂るのが基本です。お茶やブラックコーヒーでもいいですが、やはりベースとして飲むのは水道水やミネラルウォーターにするほうがいいでしょう。

たまに、スポーツドリンクを飲んで水分補給をしている人がいますが、これはおすすめできません。スポーツドリンクには大量の糖質が含まれているため、かえって糖尿病などを進めてしまい、腎臓に悪影響がもたらされる可能性があります。同様に、炭酸飲料、フルーツジュース、野菜ジュース、乳酸菌飲料、甘いコーヒー飲料など、糖質が多く含まれた飲み物には注意が必要です。こうした甘い飲み物を水分補給の感覚でしょっちゅう飲んでいたら、腎機能にもかなりのダメージがもたらされると思っておいたほうがいいでしょう。

あと、みなさんご存じとは思いますが、ビールなどのアルコールは水分補給にはなりません。アルコールは利尿作用が高く、体内の水分がおしっことして出ていってしまうため、逆に脱水に注意する必要があります。飲む場合は、かたわらにチェイサーとして水を置いておき、「水を飲みながら飲む」ことをおすすめします。

とにかく、普段どんな水分の摂り方をしているかによって、腎臓の健康はかなり大きく左右されるのです。ぜひみなさんは、小まめにかしこく水分を摂って腎臓を守っていくようにしてください。そして、それによって腎臓寿命を長持ちさせていきましょう。

上月 正博 東北大学名誉教授、山形県立保健医療大学理事長・学長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

こうづき まさひろ / Masahiro Kouzuki

医学博士。日本腎臓学会功労会員、総合内科専門医、腎臓専門医、高血圧専門医、リハビリテーション科専門医。1981年、東北大学医学部卒業。東北大学大学院内部障害学分野教授、東北大学病院リハビリテーション部長、東北大学大学院障害科学専攻長、同先進統合腎臓科学教授を歴任。2022年より現職。心臓や腎臓などの内部障害のリハビリテーションを専門とする。2011~2021年日本腎臓リハビリテーション学会理事長、2020より国際腎臓リハビリテーション学会理事長。2018年には腎臓リハビリテーションの功績が認められ、心臓や腎臓の分野に貢献した科学者に贈られる世界的に名誉ある賞「ハンス・セリエメダル」、2022年には「日本腎臓財団功労賞」を受賞。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事