「ルンバ」の米アイロボットが破産申請…ロボット掃除機で存在感を増す中国勢。データ管理の懸念が指摘されても"代替が見えにくい"現実
一方、アイロボットはカメラでの物体認識にこだわりライダー搭載が遅れた。
20年代に入ると、中国メーカーは激しい競争で鍛え上げた価格競争力と技術力を武器に海外進出を加速。掃除を終えると自動でごみ処理をしたり、水拭き用の給水と排水を自動で行うなど、「掃除」前後の行程も自動化した革新的な製品を次々に投入した。
最近では落ちているものをアームで拾って片付ける掃除機や、脚が生えて段差を超える掃除機など、驚くような機能が出現している。
中国メーカーは成熟したサプライチェーンを武器に、コスト面でもアイロボットを圧倒する。
市場調査会社IDCによると、グローバルのスマート(ロボット)掃除機市場におけるアイロボットのシェアは、24年1~3月に首位だったのが、25年1~3月は5位、4~6月は5位圏外にはじき出された。同期間の上位5社は全て中国企業だった。
OEMからの脱却狙う
雲行きが怪しくなったアイロボットを最初に買収しようとしたのはアマゾンだった。22年に17億ドルでの買収を発表したが、独占禁止法抵触を懸念する米欧の規制当局の反対で24年に頓挫した。
アイロボットはその後従業員を削減し、製造委託先を杉川機器人に集中し、製品コストや研究開発の削減を図ったが時すでに遅し。今年10月末には会社の買い手候補との協議が打ち切りになり、キャッシュ不足で破産の可能性が高まっていた。
杉川機器人の名前が浮上したのは今月に入ってからだ。米投資会社カーライルの関連会社からからアイロボットに対する約1億9100万ドルの債権を取得。未払いの製造委託費1億6200万ドル(うち9090万ドルが延滞)と合わせ3億5000万ドル(約540億円)超の債権を保有し、アイロボットの生殺与奪権を握る立場になった。
16年設立の杉川機器人はアイロボットのほかシャオミ、フィリップス、ハイアールなどの製品を受託製造するOEMメーカーだ。世界の高級ロボット掃除機の3割を生産しているとも言われ、技術力や生産力は折り紙付きだ。
ロボット掃除機の世界シェアでトップのロボロックはシャオミの出資を受け、シャオミブランドのロボット掃除機を製造していた。2位のエコバックスはOEMメーカーから中国トップブランドに上り詰めた。
杉川機器人も、業界の先駆者として世界的なブランド力と知財を持つアイロボットを踏切板にして、OEMからの脱却を狙っていると見られる。レノボによるIBMのPC事業買収、鴻海精密工業(ホンハイ)によるシャープの買収などと近い構図だが、杉川機器人はアイロボットの製品を生産していたので、よりやりやすいだろう。



















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