3920戸マンモス団地が進めるコミュニティ再設計、イベントで見えた変化の兆し。建物も住民も高齢化→若者・子育て世帯に"選ばれる"団地へ
さて、今回のイベント開催では、「山崎団地名店街」の商店会も関わっている。イベント当日は、商店会のスタンプラリーを実施していたほか、店の前で小さな催し物を行う店舗もあった。そんな店舗のひとつを訪ねてみた。
今では珍しい駄菓子屋の「ぐりーんハウス」の店主、除村千春さんに話を聞いた。除村さんは3代目店主だそうだが、相続によるものではない。
除村さんは、小2までこの団地に住んでいて、この駄菓子屋に通いつめていたが、ネットニュースでこの店が閉店すると知った。久しぶりに訪れて後継者を探していると聞き、心が動かされた。駄菓子屋は、子どもたちの大切なサードプレイスとして機能しているので、それがなくなることの大きさを感じたからだ。当時、横浜で設計の仕事をしていた除村さんは、自分の拠点をここに持とうと決断し、3代目店主となって設計事務所兼店舗を開業した。
引き継いだ店は、一部をシェアキッチンとイートインのためのフリースペースに改修した。シェアキッチンは、子どもと一緒に訪れた大人がそこで販売されるスイーツやフードを食べられるサービスという観点もあれば、シェアキッチン利用店に固定客がつけばその店目当てで来店し、駄菓子屋の存在を知ってくれるという観点もあり、相乗効果を狙ったものだ。
ただし、開店後すぐ新型コロナが蔓延し、イートインが厳しくなったため、テイクアウトとフリースペースの機能分けをしている。先に紹介した「手芸カフェ」がシェア会議室と言って利用しているのは、このフリースペースだ。
「店を自分だけでやりきるつもりはなく、いろいろな人に“自分ごと”として参加してもらいたい」と除村さんは言う。住んでいた当時はにぎやかだった商店街が、衰退していることも気になっており、商店会で協力して、集客や周知に取り組みたいと除村さんは思っている。
大規模団地の生活空間が見直されるタイミングに
さて、多くの大規模団地と同様に、町田山崎団地も居住者の高齢化が進んでいたり、大規模改修はしても建物が古く、エレベーターがなかったりオートロックなどの最新設備がなかったりする。駅からバス便という点を、デメリットに感じる人もいるだろう。
一方で、大規模団地では、ゆったりとした贅沢な間隔で住棟が並べられ、住棟間には多くの植栽があり、遊歩道や公園などが点在している。子どもたちはそこを遊び場として自由に走り回ることができ、広さゆえにその声がさほどうるさく感じることもない。こうした場所は、いまでは希少だ。
こうした団地のメリットを生かして、“自分ごと”として、多様なつながりを日常の風景にしようと活動している人たちがいる。町田山崎団地もそうした事例のひとつだ。団地ならではの住環境の良さ、子育てのしやすさなどが、今こそ見直されるタイミングに来ているように思う。
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