3920戸マンモス団地が進めるコミュニティ再設計、イベントで見えた変化の兆し。建物も住民も高齢化→若者・子育て世帯に"選ばれる"団地へ
「町田山崎団地」のオーナーは「UR都市機構」で、団地の管理もしている。この団地でも長期居住する高齢者が増え、空き家も発生するなどの「2つの老い」の課題に直面している。
UR都市機構は、エレベーターのない階段室型の住棟では、高齢者が居住しづらい上層階に若い世代を呼び込みたいと、これまでに、人気インテリアショップと提携した住戸リノベーションや35歳以下の個人が居住する場合に3年間家賃を割り引くといった「U35割」を導入するなど、若い世代の居住を促す施策に取り組んできた。
この団地でも、2017年から無印良品と提携したリノベーション住戸「MUJI×UR団地リノベーション」の取り組みを始め、「U35割」制度も導入している。
また、2015年から防災イベント「DANCHI Caravan in 町田山崎」(隣接するJKK町田木曽住宅と共同開催)を実施するなど、地域参加型のイベントを継続的に開催し、団地の自治会や商店会とも良好な関係を築いてきた。
とはいえ、年に1回の防災目的のイベントだけでは、非日常の交流となってしまう。そこで、「新しい団地の日常風景をつくりたい」と考え、1年半前からYADOKARI社と連携を始めた。
YADOKARIは、町田市役所跡地の芝生広場「町田シバヒロ」で多彩なイベントなどを開催し、コミュニティ形成の支援を行うなどの実績もあり、UR都市機構では鶴川団地でも連携事業を行っていた。こうした経緯で連携を始めたYADOKARIが、URと共に実証実験と位置付けたのが、「まちやま まるごと スコーレ」だ。
「まちやま まるごと スコーレ」の役割は?
YADOKARIで町田山崎団地を担当する「まちやまプロジェクト」のリーダーである木村勇樹さんに聞いた。
「スコーレ」とは、古代ギリシャ語で「余暇」を意味しており、スクールの語源にもなった言葉。広々とした敷地や多様な人が行き交う団地の魅力を活かし、「学び」と「余暇」をテーマにした実証実験イベントが、「まちやま まるごと スコーレ」だという。
ではなぜ、実証実験と称しているのだろう? イベントは単ににぎわい形成の手段ではない。これから町田山崎団地が「若い世代や子育て世帯に選ばれる団地」を目指すために、どういった方針を立てるか、住民の反応やニーズを探るための手段としてイベントを開催しているからだ。
木村さんは、このイベントの大きな特徴として「未来団地会議 まちやまプロジェクト」を挙げた。これは、多様なつながりの中、たとえば団地に暮らす人と周辺に暮らす人、大人と子どもなどが一緒になって、これからの団地のありたい姿を描くもの。
イベントの開催にあたっても、出店者は単に場所を借りるだけでなく、オンライン会議などを通じて企画段階から関わる仕組みにしている。「出店者にプロジェクトを“自分ごと”としてとらえてもらい、主体的なプレーヤーとしてコミュニティづくりに参加してもらいたいから」と木村さん。
さらに、未来団地会議で団地を盛り上げる重要な役割を果たすメンバーに、「コミュニティビルダー」がいる。プロジェクトでは、地域に密着し、地域の情報を集めたり、情報をSNSで発信したりする若者を募って、コミュニティビルダーに任命している。実は筆者は、すでにこの団地のコミュニティビルダーに話を聞いていた。



















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