住宅ローン控除の対象外に…!? 東京・神奈川・千葉・埼玉の「災害レッドゾーン」の具体的な場所 対象区域の調べ方は?

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このような「災害レッドゾーン」において住宅ローンの税制面での優遇が受けられなくなれば、どのような影響があるでしょうか。

「災害レッドゾーン」の土地や住宅の需要は減退し、結果として災害リスクの低い地域への居住が促されていくことも想定されます。政府は防災庁構想でも示されている「事前防災」へ舵を切っているところです。公的資金(税金)が、将来の災害リスクを高めるために使われるのを事前に防ぐという意味合いも想定されるでしょうか。

国民目線では、災害リスクが高い地域は税制上の優遇が受けられないなど、「不利益」を被ることや、それによって居住したいエリアが「制限」されるという影響が想定されます。

住宅ローン減税の控除率は、現在年末のローン残高の0.7%(と各年の控除上限額の少ない方)であることから、例えば5000万円の新築住宅の場合、この額は最大で年間35万円となる。新築控除期間の13年間では、300万円前後となる場合などもあるでしょう。

「災害レッドゾーン」は経済性だけではない課題

立地の災害リスクに関連した経済上の「不利益」として、近年では24年10月の火災保険料改定により、火災保険の「水災料率」が、全国一律から居住地の市区町村別のリスクに応じた5段階へと細分化され、水害リスクが高い地域では保険料の割り増しがあります。

また、新築住宅に係る固定資産税の減額措置においても、「立地適正化計画の区域内」かつ「居住誘導区域外の区域」かつ「災害レッドゾーン内」で建設されている住宅などの条件を満たしている場合は適用対象外とする動きもあります。

さらに、災害レッドゾーンの需要が小さくなれば、区域内の土地建物の地価や販売価格が下がる、不動産が売りにくくなるなどの課題も想定されるでしょうか。なお、これまでは特に都市部では災害リスクが高い、または災害による被害があった地域でも、需要が上回れば地価は災害直後にはいったん下がっても、すぐにむしろ上昇に転じていく傾向もありました。

ただし、災害レッドゾーンは経済性だけではない課題があります。それは、何らかの災害のリスクが一定以上高く、例えば土砂災害特別警戒区域は「住民の生命や身体に著しい危害が生じるおそれ」がある地域であり、いざ災害が発生した際には命を落とす、建物が大きく損傷するようなこともある区域です。

居住の自由は憲法にも定められた国民の権利ですが、住む場所を選ぶ際には、できるだけ災害に遭わないようにする考え方や、どのようなリスクがあるかを知って、ハード面、ソフト面を合わせた対策について考えておくことが重要となると考えます。

なお、災害レッドゾーンについては、最終的にどのような区域が対象となるかなど、今後の動向にも着目したい点です。例えば固定資産税の減額措置の対象外のように災害レッドゾーン以外に様々な区域で除外される対象が絞られていくと、首都圏の市街地にある土地の多くは今回の除外規定に該当せず、これまで通り控除を受けられるという可能性もあるでしょう。

これから住宅購入を検討される方は、自治体の窓口や不動産会社に対し、単なるハザードマップの色の有無だけでなく、その時点で『災害レッドゾーン指定(土砂災害特別警戒区域等)に該当するか』を個別に確認することをお勧めします。

現状、最終的な決定に関するニュースではないことから、今後どのような枠組みで住宅ローン減税の控除除外が進んでいくか注視したいところです。

横山 芳春 だいち災害リスク研究所 所長・地盤災害ドクター

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よこやま よしはる / Yoshiharu Yokoyama

地形と地質、地盤災害の専門家。早稲田大学大学院理工学研究科博士課程を修了、関東平野(茨城県南部全域の常陸台地)の地形・地質のなりたちに関する博士論文で博士(理学)の学位を取得。早稲田大学理工学総合研究センター勤務ののち、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門(旧・通産省工業技術院 地質調査所)などで研究に従事。現在は、さくら事務所が運営するシンクタンクだいち災害リスク研究所所長として、災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。地盤災害のプロフェッショナルとして活動している。

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