地銀が悲鳴を上げる「外国人対応」 セブン銀ATMが狙う"総取り"インフラ構想

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

西井健二朗常務執行役員によると、サービス開始からほとんど宣伝していないにもかかわらず、口座開設は右肩上がりで増えている。直近では月3000件近い。外国人コミュニティでは口コミの伝播が速い。「ATMで口座が作れるらしい」という情報が、SNSや知人のネットワークを通じて広がっているのだろう。広告費をかけずに顧客を獲得できる。セブン銀行にとっては願ってもない展開だ。

セブン銀行
セブン銀行の口座約300万のうち、1割にあたる33万口座が外国人名義だ(筆者撮影)

攻め手はまだある。今年9月、同社は外国人材管理SaaS「dekisugi」との連携を始めた。

dekisugiは、技能実習生や特定技能人材を受け入れる監理団体・登録支援機関が使うクラウドサービスだ。外国人労働者の在留資格や個人情報を一元管理できる。グローバルトラストネットワークス(GTN)グループのグレッジが提供している。

dekisugi
外国人材管理SaaS「dekisugi」との連携で、口座開設を一括申請できる(筆者撮影)

セブン銀行との連携で、dekisugiに登録済みの情報を使って口座開設を申し込めるようになった。監理団体がボタンを押せば、複数人分の申請を一括で処理できる。口座番号が発行されたら、そのままdekisugi上で給与振込先として登録すればいい。

これまで、監理団体の職員は入国したばかりの技能実習生を連れて金融機関に出向き、1人あたり1時間以上かけて口座を開いていた。この手間が一気に消える。来店は不要で、最短2営業日で口座ができあがる。

セブン銀行が狙う市場

セブン銀行の外国人対応は、今に始まったことではない。2007年には海外発行カードで日本円を引き出せるようにし、2011年には海外送金を始めた。Western Unionと組んで、世界約200カ国への送金を可能にしている。ATMの多言語対応も少しずつ広げてきた。海外カードの年間利用件数は1400万件に達する。

2020年には新生銀行(現SBI新生銀行)と合弁で「Credd Finance」を立ち上げ、外国人向けクレジットカード「Sendy Credit Card」やローンも手がけた。ただ、この与信事業はいま新規申し込みを止めている。

外国人への融資は難しい。日本国内に信用情報の蓄積がなく、在留資格には期限がある。返済が滞っても督促しにくい。同社は与信を伴う商売から手を引き、預金口座やデビットカード、送金、手続き代行に絞り込んだ。

次ページATMを「サービスプラットフォーム」へ
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事