50代で「リストラ」された孔子と、完璧なマニュアルを残したマーニー…歴史が教える事業継承のパラドックス
しかし、この「完璧さ」が仇となります。パトロンであった皇帝が死去し、政権交代によってマーニーが粛清されると、残された組織は硬直化してしまいました。
創業者が作ったマニュアルが完璧すぎたために、後継者たちは「マニュアルを守ること」が目的化してしまい、時代の変化に合わせて教義をアップデートすることができなかったのです。結果として、あれほど隆盛を誇ったマーニー教は、環境変化に対応できずに消滅してしまいました。
リーダーが残すべき「余白」
2人の人生を比較すると、事業継承における興味深いパラドックスが見えてきます。
孔子は、教えを体系化せずに死にましたが、その「不完全さ」ゆえに、後世の弟子たちが時代に合わせて教えを進化させることができました。一方、マーニーは完璧な組織とマニュアルを残しましたが、その「完全さ」ゆえに、組織は変化の能力を失い、滅んでしまいました。
もちろん、企業経営において事業継承の準備やマニュアル化は重要です。しかし、トップがすべてを決めすぎると、次の世代は思考停止に陥り、組織の寿命を縮めてしまうのかもしれません。
あえて決めきらない。解釈の「余白」を残して、次世代に託す。そんな「負けるが勝ち」のような引き際の美学こそが、組織を100年、1000年と長生きさせるための秘訣なのかもしれません。
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