「最後まで飼えないなら飼うな」という正論が招く"弊害"――"高齢者がペットと仲良く暮らす社会"に必要な取り組みを獣医師が解説
2023年度、飼い主から保健所に持ち込まれている犬猫の数は1万頭あまり。その多くは高齢者からの引き取りです。
ペットは高齢者を健康にしてくれるメリットがありますが、高齢者の入院や死亡により動物たちが行き場を失うリスクは小さくないという事実に目をつむるわけにはいきません。この矛盾に私たちの社会はどう向き合うべきなのでしょうか?
高齢者は飼うべきではない?
「最後まで飼えないなら飼うべきではない」という意見は、行政や動物愛護関係者から繰り返し発信されている、動物愛護の基本理念ともいえる考え方です。
日常的に引き取り依頼の相談を受ける保護団体では、その気持ちは一層強いことでしょう。「これ以上、私たちに迷惑をかけないでほしい」と感じながら活動をされている方は少なくないと思います。
動物の命を守る、動物たちの生活を守るという立場からすれば、「最後まで責任を持てないなら飼わない」というのは基本的な姿勢ともいえます。そして誰も反論できない強さがあります。
一方で、ペットと暮らしたいと願っていても、将来的に飼育を続けられなくなる不安から、飼育を諦めている高齢者がたくさんいます。
一般社団法人ペットフード協会が実施した「2024年全国犬猫飼育実態調査」によれば、現在犬猫を飼育していない高齢者(60歳以上)の中で「今後犬・猫を飼いたい」と希望している人は、60代で犬5.9%、猫4.4%、70代で犬5.0%、猫3.3%となっていて、一定数がペット飼育をしたいけれども、していない・あきらめている状況がうかがえます。
飼育をためらう理由としては、「最後まで世話ができないかもしれない」「経済的に不安がある」「体力や健康に自信がない」といった内容の項目が上位に挙げられています。
動物と暮らしたいという思いを抱きながらも、自分にはそれが許されない。そんな高齢者の思いが感じられます。
命に向き合う以上、「安易に飼うべきではない」は正論です。終生飼育の責任を果たせないと考えた人が飼育を断念するのは「責任ある行動」といえます。
現在、多くの行政機関では犬や猫の譲渡にあたって年齢制限を設けており、「65歳以上には譲渡しない」もしくは「保証人を求める」とする施設が多数を占めています。
これは、再び飼い主を失うリスクや、飼育困難のリスクを防ぐための措置であり、その趣旨は、動物愛護の観点から正当であり、理解できるものです。保護団体においても、同様に年齢制限を設けているところが多くあります。


















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