「最後まで飼えないなら飼うな」という正論が招く"弊害"――"高齢者がペットと仲良く暮らす社会"に必要な取り組みを獣医師が解説

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日本の独居高齢者世帯は737万世帯、高齢者の夫婦のみの世帯は827万世帯を数えます。実に全世帯の3割が高齢者のみの世帯です(高齢社会白書、内閣府、2021)。

70代以上の犬猫の飼育率は犬で8.9%、猫で7.6%。単純な掛け算をすれば、高齢者のみで犬猫を飼っている世帯は、258万世帯にも上ります(犬猫飼育実態調査、一般社団法人ペットフード協会、2022)。

もちろんペットは犬猫だけではないので、犬猫に限らなければさらに増えます。

これだけの世帯すべてが、無事最後まで飼いきれるかといえば、当然それは難しい。一定の確率で飼育困難が発生するのは避けられません。

3割強が「別居の親族を頼れない」

2011年に内閣府が実施した調査(平成23年度 高齢者の経済生活に関する意識調査結果)によれば、高齢者を対象に「病気のときや、1人ではできない日常生活に必要な作業の手伝いなどについて頼れる人の有無」を尋ねたところ、60歳以上の高齢者の単身世帯の66%が「別居の親族」を頼れると答えています。

逆に、34%は別居の親族を頼れないと感じているということがわかります。なお、60歳以上の夫婦2人世帯の場合は、「別居の親族」を頼れると回答した世帯は、47.1%でした。

3分の1の単身高齢者は、日常の困りごとを手伝ってくれる親族が近くにいません。当然ながら日常の困りごとの中には、ペットの世話についても含まれるでしょう。

しかも、これは15年前の調査結果です。近年ますます「孤立無援社会」といわれるようになっている日本では、この傾向がさらに強まっていると推測されます。

ここでどれくらいの高齢者が飼育困難のリスクを抱えているのか、計算を試みます。

・日本で65歳以上の世帯は全体の約4分の1
・日本の高齢者世帯の3分の1は別居の親族を頼れない状況
・70代のペット飼育率は、犬8.4%、猫7.8%(犬猫両方飼育する世帯もあるので高齢世帯の7分の1が犬猫を飼育すると仮定)

以上から、「犬猫を飼育する日常的に親族を頼れない高齢世帯」は、およそ65万世帯であると推測できます(2022年の日本の世帯数5431万世帯×1/4×1/3×1/7=64.6万世帯)。これだけ多くの世帯が、飼育困難の潜在的なリスクを抱えているというのは衝撃的な事実です。

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