受験競争の激しい韓国で「1年間"休む"」選択をした子どもたち——。『オー・マイ・ニュース』創設者ら語る、日韓に共通する「教育の未来」
――韓国が子どもに学業ストレスを与える社会になっている原因は?
オさん:韓国は6.25動乱(朝鮮戦争)の後にとても貧しい国になりました。親たちは「あなたがいい職場に入り、出世したら、私たち家族は良い生活ができる」と、子どもたちに言ってきました。
伝統的に、いい学校に入ったら、いい職場に就職できるし、お金をいっぱい稼げると言われてきたんです。親から自分の人生の道を作られる、影響されることが多かったと思います。
ですが、みんなソウル大学に行こうとすると、受験競争が激しくなる。そこに行けなかった人たちは“失敗した”“負け犬だ”と感じるようになりました。とても多くの子どもたちが「私は努力をしても、すでに負け犬が確定している」という気持ちに陥っていると感じます。
幼稚園の頃にはどの子も明るかった顔が、大きくなるにつれてだんだんと暗くなり、言葉数も少なくなる。
私には娘と息子が1人ずついるのですが、親がそういうことを言わなくても、社会がそうしたストレスを与えていく。親が言わなくても、そういうことにストレスを感じていたのではないかと。
下の息子も、小学生までは言葉もはつらつとし、明るい性格だったのに、中学に入ると、すごく顔が暗くなり、高校生になるとあまりしゃべらなくなりました。父親として、すごく衝撃を受けました。今考えてみたら、あの時はきっと、ありのままの自分を愛せない瞬間だったんだと思います。
そのような中、デンマークの学校を訪問して驚いたんです。中、高校生の表情に、まるで小学生のような生き生きとした顔があったのです。この訪問をきっかけに、韓国の教育を変えなければいけないと強く感じるようになりました。
私の作った「クムトゥルリ人生学校」は1年間の学校でした。高校に行かず、1年間入るものです。ですから、クムトゥルリに入学する子は、ほとんどの生徒が高校に進学する中、みんなとは違う道を選ぶことになります。
そのため入学する前に、本当に1年休んでいいのかと、すごく悩んで決断していると思うんです。でも、これがすごく大切なことだと考えています。
私の人生はもう決まっているのではなくて、私が選択できるんだということを感じることができるからです。
「クムトゥルリ人生学校」の中では、自主性を育てていきます。自分で食事も作りますし、洗濯もします。何を学ぶかという授業科目や、時間割も生徒たちが作ります。これをやるのは、そういう過程を通して、自分の人生を自分で作っていく力を育てたいと思っているからです。「生きているっていいもんだな」、そう人生の楽しさを感じてもらうのが大事だと思っています。
韓国と日本、教育は変わるのか?
岩本さん:基本的には近い部分が日本にもまだまだあるなと思っています。日本でも、子どもたちが出会う大人は親と、学校や塾の先生だけということが多くなっています。本当に狭い価値観の中で、18年間育っていくという中に息苦しさを感じることがあると思います。
よく自己肯定感ということを言われたりしますが、ありのままの自分を愛せるかとか、自分が何かやってみたいと思った時に、自分の足で踏み出せるのかという意欲の部分が、日本の子どもたちは諸外国に比べて圧倒的に低いというデータもあります。これは韓国の状況と大きく変わらないのではないでしょうか。



















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